6.大図書館で資料を探しました
「お兄様!」
そのまま私は今日もブラッドと良からぬ事を企んでいるお兄様のところに押し寄せたのだ。
お兄様は私と違ってお父様とお母様から書類仕事の能力をふんだんに受け継いでいた。お兄様は魔力はからきしだけど、こういう事務的なことは得意なのよ。私が頼んだらやってくれるだろう。
あの迷宮と呼ばれる図書館から造作も無く必要な資料を探し出してくれるはずよ。
「何だ。俺達はガキには用は無いぞ」
そう思って声をかけたのに、その横にいる口の悪いブラッドが私を拒絶してくれた。自分もガキのくせに! それに私も脳筋のブラッドには用はないわ!
「お兄様。私最果てのダンジョンについて知りたいの」
私がブラッドは無視して、お兄様を必殺上目遣いで見上げる。
両手を胸の前に組んで目をうるうるされて見上げる様はあたかも聖女様のような……
「出た! 必殺物乞いスタイル!」
後のビアンカの心の声がダダ漏れなんだけど……
誰が乞食の物乞いなのよ!
余程私はビアンカを吹っ飛ばしてやろうかと思った。
でも、私といえどもビアンカの障壁を破れる自信は無いし、今は大切なところだから、無視することにしたのよ。
「最果てのダンジョンって、あの伝説のダンジョンか?」
お兄様が遠くを見るようにして言ってくれた。
「俺の国にある世界で一番攻略が難しいと言われているダンジョンだぞ」
聞いてもいないのに、ブラッドも入って来た。今私を拒絶したのは誰なのよ!
「それを調べてどうするんだ?」
「うーん、ちょっと調べてみたいなって」
お兄様の問いに私は笑って誤魔化した。後にミア達がいる前でそのダンジョンに行くなんて言っていたらお母様に言いつけられて止められるに決まっているし……ここは慎重にいかないと……
「じゃあ、大図書館に行くか」
「俺も興味はあるからな」
誘ってもいないのにブラッドまで一緒に来てくれたんだけど……まあ、良いか!
捜し物をするときは多い方が良いし……
私達は私の護衛のビアンカと私の侍女のミアとお兄様の護衛騎士二人にブラッドの護衛騎士一人を連れて大人数で大図書館に行った。
今日はジャスティンジュニアは訓練だ。ルカと戦わせてもらえなかったから、もっと強くなるまで訓練しますとしばらくは訓練に没頭するようだ。
まあ、私の護衛騎士は強くなってもらわないと困るから、訓練してくれるのは全然問題ない。
それに、自分の身くらい自分で守れるし、お守りも山のように持っているし……
お母様がくれたシャラザール教のお守りの十字架から果てはシャラおばちゃん召還のお守りまであった。
「アリス。そのお守りを使うと被害が甚大になるから本当に身の危険を感じた時以外は使ってはいけないよ」
とお父様からは言われているけれど……最近はシャラおばちゃんともあまり会えていないから呼んでもいいと思うんだよね。
そう周りに言ったら、
「お願いだから止めてください」
ビアンカには涙目で言われたし、
「下手したら宮廷が壊滅しますから止めてください」
とミアには頼まれて、
「俺がアリスの馬になるから呼ぶのだけは止めて」
と馬のおじちゃんからも懇願されたんだけど……
さすがシャラおばちゃん。皆にそこまで恐れられるなんて本当に凄い!
さすが世界一のシャラおばちゃんは違うと私は別な意味で感心していた。
お兄様は図書館に行くと司書の人に二三質問して場所を確認してくれた。
「50のBと言うと遠いところだな」
お兄様は司書の言う棚番号を聞いただけで大体の場所が判るみたい。さすがだ!
私達は感心してついていった。
お兄様は迷路になったような通路を迷うことなくずんずん歩いて行く。
良かったお兄様に頼んで。
私一人なら絶対に行き着けなかったと思う。
「フランク、お前凄いな」
ブラッドも感心していた。
うーん、ブラッドと同じレベルかと思うと少しへこんでしまったんだけど……
何故か途中で階段を何回か上り下りしたけれど、何故一直線で行けるようにしていないんだろうと不思議だった。
「おい、フランク、まだか?」
ブラッドが歩くのに飽きてきたみたいだ。
「あと少しだ」
お兄様は地下地区の一角の本棚の前で止った。
そこには古びた本ばかり並んでいた。
古代語とか色々書いてあって私はよく読めない。
げっ、古代ノルディン語なんかで書かれていたら絶対に読めないんじゃないかと私は気付いてしまった。
ダンジョンはノルデイン帝国にあるし、そういう事は十分に予想できた。
まあ、その場合はお兄様に翻訳してもらおう。確か読めるはずだ。
「あった。この棚だ」
お兄様が指さした本棚は大きな本棚だった。
どうやら本が千冊以上あるみたいだ。
「凄い量の本だな」
「ここからどうやって見つけるの?」
私が尋ねると……
「うーん。最果てのダンジョンだろう! おそらく古代ノルデイン語で書かれていると思うんだよな」
「えっ、俺は読めないぞ!」
「ブラッド、あなたノルデイン帝国の皇太子でしょう。自国の古語も読めないの?」
私はいつもの仕返しとばかりにブラッドを馬鹿にしてやった。
「じゃあ、アリスは読めるのかよ?」
馬鹿にした私にブラッドは聞いてきた。
「読める訳ないでしょ」
「ほら見てみろ。読めないのは一緒じゃないか!」
「私は他国の人間だけど、ブラッドは自国の言葉じゃない!」
「仕方ねえだろう。今時古代ノルディン語なんて読める奴は考古学者くらいしかいないよ」
私の言葉にブラッドが反論してくれた。
「ちょっと静かにしてくれ。今、探しているから」
お兄様に注意されて私とブラッドは黙った。
ここはお兄様に任せるしかない。
下手に私達が探しても読めないし、下手な本を手に触れると本そのものがバラバラになってしまうかもしれない。ここにはそれだけ古い本も多かった。
お兄様は一心不乱に探してくれた。
「あっ、これじゃないかな?」
お兄様が一冊の本を探し出してくれた。
「凄い、お兄様! 古代ノルディン語も完璧なのね」
私がお兄様を褒めると、
「これは古代ポフミエ語だ」
呆れた顔でお兄様が私を見てくれた。
「何だ。アリスは自国の古語も読めないんだな」
ここぞとばかりにブラッドが仕返しにいってくれた。
「煩いわね。ブラッドと同じよ」
私が言い返すと、
「煩い! 少し静かにしてくれよ。俺も古代ボフミエ語はうろ覚えなんだから」
「はい!」
お兄様に怒られて私は黙ったわ。
「やあい、怒られてやんの」
「ブラッドもだよ」
そういうブラッドもお兄様に怒られていた。
ふんっ、ざまあみろだ!
私はお兄様の手元を見たけれど、全く読めない。
良かった、お兄様を連れてきて!
こういう時に天才のお兄様がいると便利だわ。
私がお兄様を周りに一人、歩く辞書がいると助かると不謹慎なこととを思った時だ。
「えっ、なんだこれ!」
お兄様が声を上げた。
「どうしたのお兄様?」
「これ、ボーガンが書いた本だ」
お兄様が心底嫌そうに言い出した。
「ボーガンって誰だよ」
「確かボフミエ魔導国の建国の3魔導師の一人だったと思うわ」
私もうろ覚えだけれど、一応国の名前をとった3人の魔導師の名前は覚えていた。
残りは確かフミンとミエールだ。3人並んでボフミエなんだそうだ。
なんとも単純な名付けだと私は思ってしまったのは秘密だ。
この名前を誇りに思っている者も多いし……
「ボーガンって謎解きが好きなんだよな」
お兄様によるとボーガンの本は謎を解かないと先に進めないのだとか……
「えっ、そうなの? とても面白そうじゃない」
私は身を乗り出した。
「で、なんて書いてあるの?」
私はワクワクして聞いていた。
次はなぞなぞです。
果たしてアリスの頭で解けるのか?
続きをお楽しみに








