4.お母様の病を治すために最果てのダンジョンに潜ろうと思いつきました
ええええ!
何故、訓練室が壊れてしまったの?
今までは壊れたことが無かったのに!
これは欠陥品じゃない?
私は声を大にして言いたかった。
直ちに非常ベルが鳴って、ジャスティン達近衞騎士が飛んで来たんだけど……
「アリス様。あれほど全力でやってはいけないとご注意申し上げましたのに!」
ジャスティンには呆れられた。
「まあ、アリス様、ここまでされるとはさすがクリスティーナ様のお子様ですな」
ジャルカはまだそう言って笑ってくれたけれど……
「だから止められた方が良いとお止めしましたのに」
ビアンカがいきなり言いだしてくれたけれど、私は聞いていないわよ。
絶対にビアンカはぼそぼそ声で「止められた方が良いですよ」って言っていたに違いないのだ。
私に聞こえなかったら注意した意味がないと思うわ。
「さすがにこれはクリス様に言わない訳にはいかないかと」
侍女のミアが酷い事を言いだしたくれた。
「そんな! ミア、嘘でしょう?」
お母様に知られたら困る。
延々2時間お説教コースは確実だ。
幸いなことにお母様は今日は気分が悪くて伏せっているのよ。
私には信じられなかったけれど……せっかくお休みの所を起こしては悪いわ。
「お願い! 絶対に言わないで!」
私がミアに頼み込んだ時だ。
「アリス、ミアに何をお願いしているの?」
そこに氷のように冷たい声が響いた。
「ゲッ!」
私は固まってしまった。
寝ていたんじゃなかったの?
やはり仮病だった?
「母上、また、アリスが魔術の強さ加減を間違えて、僕らのすぐ横を雷撃で攻撃してくれたんです」
言わなくて良いのにお兄様が喜々としてお母様に報告してくれるんだけど……お兄様は可愛い妹を守ろうという気が無いの?
「まあ、アリス、あなた、ブラッド殿下を魔術で攻撃したの?」
氷点下の声でお母様が私を睨んでくれた。
ブルブル私は震えた。
背筋を冷汗が流れる。
怖い、本当に怖いのだ。
そのまま寝ていたら良かったのに……何故起きてきたんだろう?
ここには助けてくれるお父様もシャラおばちゃんもいない。
馬のおじちゃんも暴風おばちゃんもいない……
「いや、少しかすっただけですから」
半泣きの状態でブラッドが言いだしてくれたんだけど……ちょっと待って……私の立場が更に悪くなるから……
「申し訳ありません。ブラッド殿下。お姉様にもアレクサンドル様にも後で私からお詫びに伺いますわ」
お母様が言い出してくれた。
ええええ!
これは最悪では。
「アリス、あなた先程はイリーナ殿下にも酷い事を言ったんですって! ブラッド殿下とイリーナ殿下に今ずくに謝りなさい」
お母様が言い出してくれた。
誰よ! 余計な事をお母様に伝えたのは……
「えっ、私は何も悪くはないわ!」
「良いから謝りなさい。それとも私の言うことが聞けないの?」
出たーーーーー!
恐怖の一言。
これに逆らうと後が怖いのよ。
お母様は平気でデザート1週間無しとかやってくれるわ。
料理長もお父様もお母様が決めたことには逆らわないから、どれだけ頼んでもデザートを出してくれないのよ。
デザートのためにはここは謝らないと……嫌だけど、
「私は悪くないけれど、ご免なさい」
あっ、間違えた!
つい本心が漏れてしまったわ!
「アリス、悪くないってどういう事なの?」
お母様の声が氷点下10度になったわ。
「ごめんなさい。言い間違えました」
危ない、危ない!
ここはデザート無しが2週間続く所だった。
「本当に言い間違えたの?」
心の声が正直に答えてしまったんだけど、お母様に逆らうとデザート無しが下手したら1ヶ月になってしまう。
「はい。ご免なさい」
私はブラッドとイリーナに向かって頭を下げたのよ。しおらしく出来ていたはずよ。
「ふんっ、生意気なアリスにはむかつくけれど、仕方がないから許してあげるわ」
顎を振り上げてイリーナが上から目線で見下ろしてくれた。
おのれ、イリーナめ!
お母様がいなければ言い返してやるのに!
アリス、ここはじっと我慢よ。
仕返しはお母様のいないところでやらないと!
私は我慢した。
でも、神様はちゃんと見てくれているみたいだ。
「愚か者。お前もきちんと頭を下げろ!」
そこに馬のおじさんが来て、イリーナの頭を叩いてくれた。
「ギャーーーー、酷いお父様!」
イリーナが泣き叫んだが
「イリーナ。ゴメンなさいは!」
馬のおじちゃんは容赦が無かった。
「アレクサンドル様、今回の件はアリスが生意気な事を言ってイリーナ殿下を挑発したのだと思いますわ。イリーナ殿下は悪くないと思いますよ」
お母様は絶対に相手の味方なのだ。
私は悪くないのに!
私が少しむっとすると、
「そのような事はありません。絶対にイリーナが生意気な事を言ってアリス様を挑発したのだと思います」
馬のおじちゃんが私の肩を持ってくれた。
ブラッドとイリーナは父親には弱いみたい!
馬のおじちゃんに睨まれると、
「「ご免なさい」」
やっとブラッドとイリーナが謝ってくれたので、私も許すことにしてあげたのよ。
でも、この後にお母様のお説教2時間コースかと思うとうんざりしたの……
さあ、仕方がないからさっさと怒られよう。
私がお母様についてドナドナされようとした時だ。
「うっ」
いきなりお母様が口を押えてくれた。
「「「クリス様!」」」
慌てた侍女達がお母様の背を撫でたりして世話をする。
「えっ、お母様!」
私は驚いてお母様を見た。
お母様は元気が取り柄なのに、どうしたんだろう?
「クリス様、血が出ています」
ミアが慌ててタオルでお母様の口を拭った。
どうしたんだろう?
口から血を出すなんて!
「も、申し訳ありません、皆様。いつものことですから」
お母様は周りにそう言うんだけど、いつもの事って……口から血を流すのなんて初め見たわよ!
私がいないところでいつも口から血を吐いているんだろうか?
これは何かの病気ではないの?
「少し休んできます」
お母様は侍女に囲まれて部屋から出ていった。
私は珍しくお説教部屋行きを免れたのだ。
私は本当にほっとした。
その後、イリーナ達と遊びだしたんだけど、私はお母様の容体が気になって、段々遊びに集中できなくなってきた。お母様が血を吐くなんて初めて見た。
お母様は何かの病気なんだろうか?
「あなたのお母様。あれは不治の病じゃ無いの?」
いきなりイリーナが言い出してくれた。
「そんな訳無いわ!」
私は取りあえず否定した。
「でも、あなたは病名を聞いていないんでしょう? あの口ぶりでは長い間あの症状が続いているみたいよ」
イリーネの言うとおりだ。
「あんな風に吐きそうになる症状の人で、亡くなったのを聞いた事あるわ」
イリーナが言い出してくれたんだけど……
「えっ、それは本当なの? それでその人本当に亡くなったの?」
私はショックを受けた。
「たまたまかもしれないけれど」
「ど、どうしたら治るの?」
「何でも北の最果てダンジョンにどんな病にも効く薬草があるそうよ。それを採ってくれば良いそうだけど、子供には絶対に無理だってお父様が言ってらしたわ」
私はイリーナの言葉を聞いていた。
そのなんでも治る薬草の話は私も聞いたことがあった。
ノルディン帝国の果てのダンジョンにその幻の薬があるというのよ。
未だかつて誰もたどり着けた者がいないとのことだったけれど……でも、お母様がその不治の病にかかっているのならなんとかしないといけない。
お母様は怖かったけれど、それでも私のお母様なのだ。
私はどうしてもそのダンジョンに行かねばならないと思いだしたのよ。
ここまで読んで頂いて有り難うございます。
いきなりお母様が死病にかかってしまった?
アリスはどうする?
続きをお楽しみに!








