魔王視点 ゴブリンは撃退されたので、今度は古代竜に襲いかからせることにしました
「何じゃ、もう休むというのか?」
俺様は高々10キロくらい歩いただけで、その日の野営の準備を始めたガキ共に呆れかえった。
せっかくここまで来たガキ共を懲らしめてやろうとしたのに、何と言う事だ!
俺様の目の前の水晶が、ガキ共がテントを張って狩りを始めたのが映し出してくれた。
ここまで来るまでにはまだガキ共が歩いた距離の2倍以上ある。
俺様を恐れた魔物達が逃げ出したせいで、魔物が殆どいない中で、このとろとろしたスピードだ。
こいつらはこの最奥の間までくるのに何日かかるのか、とても心許なかった。
まあ、ガキ共だから仕方がないと言えばそうだが……
こんな行程では下手したら俺のいる所まで来れないかもしれない。
何しろこの中の金髪のガキは火をつけるのにテントごと燃やしてしまうほどの愚か者だ。
最悪の場合、ここに来るまでに全員を燃やししてしまうかもしれない。
仕方がない。
俺様はまだ早いと思ったが、配下のゴブリンを使って襲撃することにした。
そして、捕まえてここまで連れてこさせることにしたのだ。
ゴブリンはまあ頭は足りないが集団行動には適した魔物だ。
数も百匹はいる。
こんなガキ共など一瞬で捕らえられるえられるだろう。
そう思って派遣したのだ。
ゴブリン達は寝込みを襲うのに成功した。
そう、最初は上手くいっていたのだ。
でも、何故か金髪のガキに襲いかかれなかった。
襲いかかったのに、弾き飛ばされたのだ。
なんとこのガキは眠りながら障壁を纏っていやがった。
こしゃくなガキだ。
ゴブリン共が集団で剣を抜いて障壁に斬りかかった。
そうだ。ゴブリン共、あっという間にそんな障壁など破壊してしまえ!
俺は心の中で叫んでいた。
しかし、小娘は手強かった。
ゴブリン共に襲いかかられながら、平然として後ろの他のガキ共と話していた。
こいつはゴブリン共が怖くないのか?
俺は拍子抜けだった。
でも、他の女どもはキャーキャー言っているのに、この女だけはびくともしていない。
なんとも肝の据わった女だ。
俺様はゴブリン共を応援した。
しかし、しぶといことにこのガキの障壁はゴブリン共の襲撃ではびくともしない。
「何をしておるのじゃ! ゴブリン共目。いくら相手がガキとはいえ、手加減しすぎじゃ」
俺が切れたときだ。
バリン!
「ギャッ!」
いきなり水晶がはじけてくれたのだ。
油断していた俺様は水晶の破片を受けて血まみれになってしまった。
「な、何事じゃ! 一体何事が起こったのだ!」
俺にはよく判らなかった。
俺様の遠見の水晶がはじけるなど久々の事だ。
爆発したように見えたが、あのガキが爆発したんだろうか?
そう思えるほどに凄まじい物だった。
俺は状況を探ろうとしたが、ゴブリン共は待てど暮らせど帰ってこなかった。
まさか100匹もいて一匹も帰ってこないのはおかしいと不審に思ったが、事実一匹も帰ってこなかった。
やっと遠見の水晶が復活したとき、あの忌々しいガキは元気に鼻歌歌って歩いているではないか!
その後ろには女のガキ2人が男達に背負われていた。
一瞬、傷を負わされたのかと期待したが、話を聞いているだけでは疲れただけみたいだった。
なんとも軟弱な奴らだ。
ゴブリン共はどうやらこのガキ共に絶滅させられたらしい。
まあ、所詮ゴブリンだ。
最弱といってもよい魔物だ。
俺様は諦めることにした。
しかし、こやつらはまだこんなところをうろうろしているのか?
この最奥の間につくまでにまだまだかかりそうだ。
俺様はそこまで気が長くない。
それにこの女の図太いこと。
他の女達は疲れ切っているのに、びくともせずにそれも鼻歌を歌うとは!
そう言えば、昔そんな女がいた。
俺はバッチイと言われて蹴り飛ばされた記憶があったし、俺様はそいつに浄化されたのだ。
ここは可及的速やかにこのガキを処分する必要があるようだ。これ以上あんな女が増えたら困る。
俺様はこの世界の魔王なのだ。
それでなくても天界にはシャラザールが地獄にはヘラが俺様をいるのだ。
こやつらは俺様を召使いのようにこき使ってくれるのだ。
地獄は今までは恨み辛みが出やすいところで俺様の栄養補給になっていたのに、今では真逆だ。
あんな所でヘラにこき使われたのでは俺様は死んでしまう。
そう思ってこの地界に降りてきたのに、この地界には元々クリスなどと言うとんでもない女がいる。
更にもう一匹増えたら俺様がいるところはなくなるではないか。
ここは何としても早急に処分せねばなるまい。
俺様は手懐けた古代竜でこのガキ共を襲わせることにしたのだ。
まあ、このガキ共なら古代竜一匹で余裕で殺せるだろう。
もし生き残ったとしても俺様がその生意気なクリスの前で惨殺してやる。
さすがのクリスも自らの子供が目の前に惨殺されれば、発狂してくれるかもしれない。
「わっはっはっはっは! そうなれば余はその恨み辛みを苗代にして強力な魔王として復活するのじゃ。さすればクリスなど我が力の前に何ほどのことやあらん。そしてクリスをやればこの世界に余の敵など一人もおるまいて」
俺様は高らかに笑ってやったのだった。
高らかに笑う魔王でした。
でも、そう上手くいくのか?
続きをお楽しみに








