2.北の皇子に切れてしまって訓練室を破壊してしまいました
「アリス様、周りの模範にならないといけないのに、中庭で戦闘をさせるなんてどういう事ですか?」
「ビアンカは護衛の魔導師です。それを護衛の任を外して勝手に戦わせないでください!」
「そのようなお転婆では今後に差し支えがあります。礼儀作法の時間を倍にした方が良いのではありませんか?」
それから私は侍女長やら副魔導師団長やらいろんな人から散々怒られた。
変だ!
騎士を吹っ飛ばしたのはビアンカなのに、私の方がたくさん怒られるなんて割が合わなかった。
まあ、私がビアンカに命じたから仕方がなかったけれど……
でも、そのビアンカにも恨めしそうな顔で見られるし……本当に私がヒール役じゃない!
まあ、モンモンを助けられたし、いけ好かないイリーナをぎゃふんと言わせられたから良しとしよう。
でも、そのいけ好かないイリーナが馬のおじさんと暴風おばさんの娘だと聞いて私は唖然とした。
あんなに人の良いおじさんたちなのに。
馬のおじさんは私がまだ三歳くらいで初めて会った時に馬になってって頼んだら喜んで馬になってくれた、とてもいいおじさんなのよ。
「アリス、あなただけだからね。あのおじさんが甘いのは!
赤い死神として他国からは本当に恐れられているんだから! 私も怖いし……」
モンモンにはそういう風に注意されたけれど……そうかな?
まあ、元々モンモンは怖がりだし、ダンジョンに行こうって誘っても絶対について来ないし……
馬のおじさんは私が喉が乾いたと思っていたら、ジュースとかを持ってきてくれるとてもいいおじさんなのに!
その息子のブラッドの方が余程意地悪だ。
私の兄のフランクお兄様と遊ぶことを好んで、よく私を仲間はずれにしようと画策してくれるし……
私の方が強いのに俺の方が強いとか言ってくれちゃって……まあ、そう言いたい年頃なのは判るけれど……
私はアリス・ドラフォード、年齢は皆に可愛がられる事間違いなしの花の五歳よ! 誰よ、洟垂れの生意気なガキだなんて言った人は! 私はこの国の筆頭魔導師のお母様の単なる娘なのよ……
そう、単なる娘なの。筆頭魔導師の娘だからって、世襲制でもないこの国では何も偉くない。
周りの平民と同じよ。
私が自慢できるものは、この透けるような金髪と、大きな青い瞳、お人形のような顔つきしかないわ……お父様はこの国の内務卿で南の大国ドラフォードの皇太子で、私もドラフォードに帰れば王女様だけどこの国にいる間はそう言うなってお母様が煩いから名乗らないのよ。ドラフォード王国はイリーナのノルディン帝国にも負けたことはあまりないんだから、国力から言っても世界最強はドラフォード王国なのよ。まあ、今はお母様がこの国の筆頭魔導師だから世界最強はこのボフミエ魔導国だけど……
私の住んでいるボフミエ魔導国は大陸中央部に位置する国だ。
今は世界で一番魔力の大きいお母様が筆頭魔導師になって治めている魔導国家なのだ。
昔は帝政を敷いていたけれど、お母様の逆鱗をかってしまって、お母様に制圧されてしまったそうだ。
お母様は普段は優しい顔をしているけど、怒らせるととても怖いのだとか。馬のおじさんの前のノルディンの皇帝がお母様の逆鱗をかって、何千キロも離れている宮殿が一瞬で雷撃で木っ端みじんになったのは有名な話だ……
「アリス様のお母様は見た目はお優しそうですけど、怒らせたら本当に怖いですからね。きちんと言うことを聞かれた方が良いですよ」
とビアンカとかは常々私に教えてくれるけれど、お母様は私にはいつも厳しいんだもの。それくらい知っているわよ!
私が唯一逆らえないのがお母様だ。
お父様や他の人には、上目遣いのお願いや、泣き落としが通用するのにお母様が駄目だと言ったら泣こうが喚こうが駄目なのよ。
そんな怖いお母様が今のこの国の筆頭魔導師なの。だから世界最強国家もこの国なのよ。
そして、その帝政打倒に協力した各国の皇太子や王族がそのまま各役所の偉いさんをしているのよ。
内務卿は私のお父様だし、外務卿は北の大国ノルディン帝国の馬のおじさん、ボフミエ海を挟んだ反対側にはマーマレード王国があってそこの皇太子のジャンヌおばさんが魔導部隊のトップでこの二人は夫婦よ。モンモンのお母様が東の大国陳王国の王女で今は農務卿をしているという、とても国際色豊かな国なのよ。
何でも各国の皇太子が勉強兼ねてこの国の政治を回しているのだとか。
各国の次期国王や王族が治めているので、世界最強の国がこのボフミエ魔導国と言えるのかもしれないわ。当然その子供達の多くもこのボフミエ魔導国にいるので王族といえども掃いて捨てるほどいて全然珍しくないのよ。だからここでは平民のアリスちゃんも大きな顔していられるわけなの。
「ふうううう」
私がやっとお小言から解放されて子供部屋に戻ってきた時だ。
何故か今日はお母様に怒られなかった。いつもは真っ先に出てきて愚痴愚痴怒るのに!
何でも、気持ちが悪いから伏せっているんだとか。
変だ! お母様が伏せっているのを初めて見た。私と一緒でお母様も健康だけが取り柄なのに、一体どうしたんだろう? お母様が風邪引いたのなら太陽が反対から昇るかもしれない……お母様に知られたら怒り狂いそうな事を私は想像していた。
子供部屋ではお兄様とブラッドが端の方でまたこそこそと何か良からぬ事を企んでいた。
「お兄様、何しているの?」
私が寄っていくと、
「何でもないぞ」
お兄様は目をそらしてくれた。
これは怪しい!
絶対に私を抜きにして何か良いことをする気だ。
私は仲間はずれにされるのが大嫌いだった。
「お兄様!」
私がお兄様の目を見ようと顔を近づけたが、お兄様は目をそらしてくれた。
「アリス、男には男の話があるんだよ」
横からブラッドが私の嫌いな言葉を威張って話してくれた。
私を仲間はずれにする常套手段だ。
「あっ、そう。お母様! お兄様がまたアリスを……」
「おい、アリス、止めろ!」
大声を上げようとしたわたしをの口を慌ててお兄様が押さえてくれた。
気にしなくてもお母様は気分が悪くて伏せっているのに! お兄様はいつもこの手が通用するのよ。
「じゃあ教えて」
ここぞとばかりに私が聞くと、
「女は足手まといになるから嫌だ」
横からブラッドがまた私の嫌いな言葉を話してくれた。
どうやらこいつは私に喧嘩を売りたいらしい。
まあ、男だから強いってとこを見せたいのは判るけれど、私の前で嫌いな言葉を二つも言うなんて!
「しかし、どうするんだよ。アリスはしつこいんだぞ」
「なあに、お子ちゃまはママの所に居れば良いんだよ」
こいつはみっつも私の嫌いな言葉を話してくれた。
それもお母様の所に居れば良いなんて拷問だ。
最近お母様は私に色々と口うるさいのよね。
こうなったら仕方がない。
言いたくなかったけれど、売り言葉に買い言葉だ。
「ふんっ、私よりも弱いくせに!」
私は直球でブラッドに言い返したのよ。
「何だと! 貴様、女の子だと思って静かに聞いていてやっていたら、いい気になりやがって、良いだろう。決闘してやる」
「おい、ブラッド、やめろ! アリスは強いぞ」
「ふんっ、俺は赤い死神の息子だぞ。こんなお子ちゃまに負けるわけはないだろう!」
ブラッドは胸を張って言ってくれたけれど、私に勝とうなんて100年早いのよ。
幸いなことに今日は煩いお母様もいないし、思い切って出来る。
私はやる気満々だった。
私達はシャラおばちゃんが私用にと特別仕様と作ってくれた訓練室に行った。
私が多少本気出しても壊れない作りになっているそうだ。
「ブラッド、どうなっても知らないぞ」
お兄様が心配していたが、
「ふんっ、お前こそ、妹が傷物になっても知らないからな」
「その場合はお前が責任を取れ」
「あんな生意気な女は嫌だ」
なんかブツブツむかつくことを私の前で話してくれているけれど、私が負けるわけはないのに!
「それに婚約するなら、胸がモンモンくらい大きくないと。アリスは胸無しだからな」
「おい、ブラッドそれは禁句だぞ」
ブラッドの言葉にお兄様は青くなってくれたが……
五歳の子供に胸なしもくそも無いのだけど、私はその言葉に完全にぷっつん切れた。
モンモンはどちらかと言えば少しふくよかで、本人はそれをとても気にしているのだけど、胸もあるのだ。私は痩せ型で、当然ペチャパイだ。
お母様も私よりはあるけれどどちらかというとそうで、お父様は胸が小さくていいとか訳の判らない事を言っていたけれど、無いよりある方が良いに決まっているのに! 私は胸が無いのがコンプレックスだった。
「余も無いから機にしなくて良いぞ」
とシャラおばちゃんがそう取りなしてくれたけど、世界最強戦士のシャラおばちゃんは男どもを顎で使っているから男は選り取り見取りなのかもしれないが、可愛いアリスちゃんは私よりも強い立派な騎士様と結婚したいのよ。
「アリス様よりも強い男の子なんて絶対にいませんから」
ビアンカなんてとても失礼な事を平然と言ってくれるんだけど……
世界は広いんだから、絶対にそういう男の子もいるはずよ!
「誰が胸無しですって!」
私はブラッドの言葉に切れてしまっていた。
そして、ちょっと力を入れすぎてしまったのよ!
脅すつもりで振り上げた手から出た雷撃がすこし大きすぎた。
その光はお兄様とブラッドの目の前を通り過ぎて、二人は唖然としていた。
巨大な雷撃は、壁に当たっても消えなかった。
ピカ
ドカーーーーーン!
大爆発が起こってお兄様とブラッドを吹っ飛ばして、特別訓練室の壁をぶち破ってくれたのだった……
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
訓練室をぶっ壊したアリスの運命やいかに?
本話では日本風に全ての次期王様を皇太子と呼びます。ご了解を。
はっきり言って皇太子だけで10人くらい出てくるので……それと男女同権で女性も皇太子で通しますのでご了承ください。








