「白き深き雪の姫」
本作をご覧いただき、ありがとうございます。
誰もが知る「白雪姫」の物語を、少しだけ別の角度から覗いてみました。
雪のように白く、そして冷たいお姫さまの心中を楽しんでいただければ幸いです。
深い雪で身動きが取れない。踊っているはずなのに。踊らされているはずなのに
むかしむかし、雪のように白いお肌をした、とても美しいお姫さまがおりました。
その名を、白雪姫と申します。
雪は、白いばかりではありません。 深く、そして冷たいのです。
お城には、たいそう美しさにこだわる王妃さまがおりました。
ある日、王妃さまは、いつものように鏡にたずねます。
「鏡よ鏡、この国でいちばん美しいのはだあれ?」
鏡は、うそをつけません。
銀色の声で、こう答えました。
「それは、白雪姫でございます」
王妃さまは、ぎゅっと唇をかみしめました。
そのときです。
扉のかげで、そのようすを白雪姫が、だまって見ておりました。
「もっと怒ってくださればいいのに」
白雪姫は、だれにも聞こえない声で、そうつぶやきました。
王妃さまの怒った顔は、白雪姫にとって、とても楽しいものだったのです。
やがて王妃さまは、狩人を呼びました。
「白雪姫を森へつれていき、二度と戻らぬようにしなさい」
深い森で、狩人は剣をふるわせて立ちすくみました。
すると白雪姫が、ふりかえって、やさしく言いました。
「ほら、獲物が来たわよ」
そのとたん、大きなイノシシが飛び出してきました。
白雪姫は、こわがりません。
小さなナイフで、すばやく用をすませました。
「この心臓を、王妃さまに持っていって」
白雪姫は、そう言って、狩人を帰しました。
狩人は、夢中で森を走り去りました。
白雪姫は、ひとり森に残り、雪のように白いまま、立っていました。
森の奥には、小さなおうちがありました。
そこには、七人の小人たちが住んでいました。
小人たちは、かわいそうなお姫さまを守ろうとしました。
白雪姫は、にっこり笑って、おそうじをし、ごはんを作りました。
「ありがとう。こわいの。ひとりにしないで」
その言葉に、小人たちは大よろこびです。
白雪姫のほほえみは、宝石よりも大切でした。
けれど白雪姫は、ちゃんと知っていました。
これは、王妃さまを呼ぶための、しかけだということを。
ある日、ぼろを着たおばあさんが、林檎を持ってやってきました。
白雪姫は、すぐにわかりました。
(お義母さま、そんな姿になってまで)
「まあ、おいしそう」
白雪姫は、ためらわずに林檎をかじりました。
そして、ことりと倒れました。
王妃さまは、大よろこびで帰っていきました。
白雪姫は、目を閉じたまま、心の中で笑っていました。
白雪姫は、ガラスのおひつぎの中で、静かに待ちました。
小人たちの泣き声は、子守歌のようでした。
やがて、王子さまが通りかかりました。
白雪姫の美しさに、すっかり心をうばわれました。
おひつぎが動いた拍子に、白雪姫は目を覚ましました。
「ここは、どこ?」
王子さまは、たいそうよろこびました。
お城で、にぎやかな結婚式がひらかれました。
そこには、王妃さまも招かれていました。
白雪姫は、にこやかに言いました。
「お義母さま、いっしょに踊りましょう」
その日から、この国は、白雪姫のものでした。
白く、うつくしく、そして――
とても静かな国でした。
「お義母さま、大好きよ。」
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
「お義母さま、大好きよ」という言葉に込められた、彼女の真意を感じ取っていただけたでしょうか。
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