1-8 襲撃者
悪役令嬢(仮)と仲良くなったおかげでリエル関係の煩わしい話が耳に入ってこない。すごい。
「うんこれ他の人も近づいて来れないな」
当たり前である。
ゲームの情報ちょっとでも集めたいんだけどな。あんまり考えないで普通に学校生活を楽しんだ方がいいのかもしれない。
「はぁ…あ、紅茶美味しい」
外に出る機会も多くエネルギーに余裕があるので味覚にもエネルギーを振れるってわけですよ。
「今日はお前表情あるのな」
リエルがとりあえずといった様子で聞いてくる。
「今日は余裕があるからね。僕に聞きたいことがあるなら今がオススメだよ」
僕がそう言うとリエルが困ったように頬をかく。
ちなみに今のリエルは人避けで他人から見えにくい状態になっているらしいので、今の僕は1人で話す痛いやつに見えているのかもしれない。
そんなに大変ならハーレム解散させればいいんじゃないかな。
「お前さ───────」
「スティーヴさん、ですよね?」
話しかけられた。
「ああ、そうだよ」
「あの中等部生でありながら貿易商の重要ポストに就いているスティーヴさんと会話できるなんて光栄です」
「よく分かっているじゃないか」
握手をして挨拶をしたあと、見送りに手を振る。
ふむ。僕に話しかけて来るやつは逆にゲームとは関係ないんじゃないだろうか。重要人物が僕と関係あるなら僕はモブなんて言われてないわけで。
「スティーヴは思ったよりすごい人ですわね」
「僕は特待生だからね!」
マリスに感心されたぞ。
せっかくなので自慢しておく。
「あと強い」
「ドヤ顔ムカつきますわね……」
軽口を言い合いながら、パーティ会場を観察する。
「婚約者に話しかけなくてもいいのかい」
第2王子の様子を横目でうかがいながら問う。
マリスの婚約者だというのは調査済みだ。
「分かっていて言っていますわね?」
「ふふ……」
分かんないです。
「爆散させ……られませんわね……くっ」
……怖がられているのか、当の王子へ顔を向けたらスッと目をそらされた。まあ今の僕謎に女装してるちょっとヤバいやつだしな……。
少し落ち込んだ。
「しかし僕とずっと一緒にいてもいいの?」
「ふんっ、私を誰だと思っていますの?パーティにふさわしい相棒は私自身で決めますわ」
「ふうん」
思ったより気に入られた?理由は分からないけどいいことだ。貴族の友達ほしかったんだよね。
……そう言えば乙女ゲームには悪役令嬢が付き物だと勝手に思ってたけど、実際の乙女ゲームには悪役令嬢っていないんだったっけ。じゃあこの子って何者?
「……リエル、君狙われているよ」
「だな、そこのかわい子ちゃんは関係あるのか?」
なんで僕に聞くんだよ、あとかわい子ちゃんってマリスのことか?
「……関係ないと思うけど。彼が攻撃するなら暗殺なんて地味な手段ではなく、もっと派手な手段で来るだろう」
「うーん、確かに」
第2王子のことだよね?重要人物としか思えない彼のことは当然調べた。調べなくても耳に入ってくるくらいには目立つ人物のようだけど。
僕の予想なら爆散させて高笑いをするくらいはやる。
リエルもうんうん頷いているので僕の発言はあながち間違いでもなかったようだ。
「しかしリエル、君に気づいているようだから相当やり手なんだろ。魔法使いとか?」
「別に魔法の素養が無くても勘の良い奴なら気づけるんだけどな」
「つまんない」
「なんで!?」
魔法で遠距離攻撃してくる暗殺者ってなんかワクワクしない?
僕も昔はスナイパーに憧れたものだ。
「1人で何を話しているんですの?」
マリスは魔法の素養も勘の良さも持っていないらしい。
……人を爆散できるくらいの強さはあるんだよな?
「ああ、あそこにさ怪しい人影が見えるだろ?アレをどうしようかと思ってさ……どう料理しても絶対に楽しい!」
ちょっぴり楽しくなってきた。アンナには関係なさそうだし、安全に楽しめるアクシデントみたいなものだ。
こういうのは良い、これだけでもこのパーティに来た甲斐はあった、かも。
「……男爵家の人間ですわね。私が言って聞かせればすぐにでも這いつくばって足を舐めることでしょうが……」
「それはそれで面白そうだけどちょっと勿体ないね」
「いや俺への刺客で何遊ぼうとしてんだ」
「!隣に人がいるではないですか!」
マリスはようやくリエルに気がついたらしい。
少しリエルの透過度が下がったような気がする。マリスに見えるよう調整したのかな。
「君もう姿を見せて大丈夫なのかい。取り巻きがいつものようによってくるんじゃ……」
「皆そんなに暇じゃねぇよ」
辺りを見回すと、ハンカチを噛みながらコチラを睨んでいる少女が……見回すのをやめた。
とりあえず大丈夫そうだ。




