1-7 文化祭
「スティーヴ、なんでこの学園にいる美男美女を私に聞いてくるのです?」
「う」
リエルが最近忙しそうなのでたまに話す女の子にリエルに対してと同じようなノリで話してしまった。ほら女の子ってそういうの好きかなって……偏見だな、反省しよう。
「僕あんまりそういうの詳しくないからさ……」
「ふむ。そうだ。スティーヴ、その辺りの認識を深めるなら今度やる文化祭が良いのではありませんか?」
服を引っ張りながら言われた。
「ああ……」
欠席しようと思っていたが、たまには良いかもしれない。
文化祭。確かに他学年の人を見るには良い機会だ。
とはいえ準備とかなんにも参加してないんだよな……見て回ろうにも一緒に回る人がいない。目の前のルナは父親と回るって言ってた気がするしどうしよっかな。
▫
「アンナ。僕も文化祭に出たいのだけど、どうすればいいかな?」
素直にアンナを頼った。
アンナはほら、もうクラスの中心人物だし。情けない気もするがこれも最終的にはアンナのためだ。
「うん?私と回るんだよね?」
「え、あ、うん」
どうやら僕と文化祭を見て回るのは確定らしい。
「そうだ!私の服着よう?身長も近くなってきたし着れるでしょ!」
「……ん?」
「双子コーデやってみたかったんだよね〜」
「分かったよ……」
あまりにもアンナが楽しそうなので拒否するのはやめておくことにした。まあそんなに酷いことにはならんだろ……。
▫
「チョコバナナ美味しい!」
「ほら口にチョコ付いてるよ」
持っていたハンカチでアンナの口元のチョコを拭う。思いっきりかぶりつくから。
文化祭の出し物でチョコバナナを売っているところがあったのだ。
「えへへ、とっても美味しくって。ほらスティーヴも食べてみて」
「や、僕はい、むぐ」
口の中に甘さが広がる。
味は普通にチョコバナナだ。なんで中世ヨーロッパ風のこの世界にあるのか謎だがそこはファンタジー。
「どう、どう?美味しい?」
そう上目遣いで聞いてくるアンナの目は今この瞬間が楽しくて仕方ないと言うように煌めいている。
「うん。アンナは可愛いね」
「ふふっ、スティーヴってば」
照れくさそうにはにかむ。
そして流されないぞと言わんばかりに一息ついてキメ顔を作り僕を見る。
「スティーヴも可愛いよ」
指で僕の頬をつつきながら言う。
……そう言えば今の僕、女の子の格好してるんだったな。
▫
「なんでお前ワンピース着てんの?」
学祭を見て回るのは楽しかった。重要人物っぽそうなキャラデザが凝ってる感じの人物をリストアップする作業もある程度進んだし満足と言える結果だ。……たまにぎょっとした目で見られたけど。
後夜祭のパーティで夜ということもあって省エネモードの僕はアンナと一旦別れて休憩していた。
それを目ざとく見つけたらしいリエルが聞いてくる。
「アンナが双子コーデしたいって言うから!」
これくらい……これくらいいいさ。女装する変態だと思われようと。だって似合ってるもの。
「まあ中等部は異性の制服着てる生徒も少なくないし、俺はいいと思うが……」
「うるさいなぁ」
白いワンピースを着たアンナとは対照的に僕は黒いワンピースを着ている。ヒラヒラしていて動きにくい。
「……スカートの中見ていい?」
「それ他の女子生徒にも言ってみたまえよ。骨は拾ってやるから」
最悪外交問題に発展するんじゃないか。リエルは魔王だってこと別に隠してないみたいだし。
「アンナのセンスは良いから、見た目はそう外してはいないと思うけど……少し装飾が多いね、走りにくい」
「パーティで走りにくさとか気にすんな」
「いざとなれば破ればいいだけだしね」
「違うそうじゃない」
冗談を言い合いつつ、様子をうかがう。
ゲームではきっと後夜祭は重要イベントだろう。どんな風にストーリーが展開されていたんだろうな、なんて考えながら。
「なんで女装しているんですの?」
悪役令嬢ことマリスが声をかけてきた。
そんなに目立つ?
「似合っているだろ?」
「そりゃ似合ってはいますけれど」
「ははは。なんなら君より似合うかも」
軽口を言ってみる。
「いえ私の方が似合っていますわ」
ここで張り合ってくるのか。
もう少し粘ってみるか?
「その心は?」
とりあえずそれだけ聞いてみることにした。
「私より美しい者などいるはずがありませんもの!」
自信家だ。美少女だもんな。僕よりこのワンピースも着こなせるだろう。ああでもマリスが着るにはちょっと地味かも。
「なるほどね」
「興味なさそうですわね……なんだかムカつきますわ……」




