4-18 いつも通り
「ナ、ナイフ!?」
エリスはまたたきをしている間にいなくなってしまった。
僕が持たされたナイフを見てルナが狼狽している。
……焼却。
「えっ!?」
「はあ……」
よかった。灰になった。目からビームじゃ驚かれる、という反省を元に手から炎を出して焼き尽くした。これなら魔法に見えなくもないだろう。
「証拠品として残した方が良かったかなぁ?」
「いえ……燃やさなければどうなっていたか分かりませんし。それよりさっきの女子生徒は?」
「いなくなっちゃったね。魔法かな……。ちなみに名前はエリス・クロウラー。ウチの学年の有名人ことレイヴン・クロウラーの妹だよ」
「そうなんですね。お知り合いのように見えましたが」
「そうだねぇ。僕って言うかアンナの?」
僕個人はたまに話す程度の仲だ。
「アンナ……?ああ、スティーヴのガールフレンドですね」
「違うよ」
よくある勘違いだ。
「え!?違うんですか!?よく一緒に帰ってるみたいなのでてっきりそうなのかと」
「僕とアンナって住んでる場所いっしょだからさ」
「……えーと?結婚してるってことですか?」
「違うよ!?」
何がどうなってそんな勘違いを!?
「僕ってアンナのお父さんに雇われてる身だからさ」
「ああ……そういえば言ってましたねそんなことも。なるほどそういう関係でしたか。これは失礼しました」
腕を前に置いて頭を下げてくる。
大仰すぎて茶化すような仕草だ。実際そうなんだろう。全く。
「話を戻しますが、さっきのエリスさん?というのはどんな方なんですか?」
自分の父親がおとしめられた間接的要因だからか鋭い目つきで聞いてきた。
「僕もそんなに仲が良いわけじゃないからなぁ。なんだろう、人懐っこくてずる賢くて憎めない?そんな感じ。あんまり貴族っぽくはないかな」
「いい子とは言わないんですね」
ルナが首を傾げながら言う。
「スティーヴは大抵人を紹介する時、いい子だよ。と言います。私からしてみると少々おかしく感じる相手にまで」
「……言ってたかも」
リエル紹介する時もいいやつだよって言った気もする。いいやつではあるよね?倫理観終わってるし人類の敵だけど。
「いい子ではないかな。うん」
思い返す。アンナのやった資料をこっそり自分のやってない資料と入れ替えたり、僕の前でどこから手に入れたのかまだ公開されていない定期テストの問題を見せびらかしてきたり。なんだっけ。スティーヴさんはエリックさんに勝ちたいんじゃないんですか?とか言ってたな。僕が満点取れない理由はうっかりミスするからってのが大きいのでテスト問題見せられても点数多分変わんないわけ。そう言って追い払った。なんの意図があってあんなことを。
「スティーヴがそう言うってことは相当ですね……。心してかかります」
「かかんなくていいよ。多分ウチのクラスのお姫様がどうにかするだろうから」
なんでこう好戦的なんだ。平和に行こうよ。
「むう。スティーヴはどうしてそう悠長なんですか。エリスさんは私達に殺し合いさせようとしてたんですよ?」
「……そっか」
僕は大して気にしていなかったけど、ルナもあのままだと僕に刺されていたかもしれないのか。確かにそれは、良くないな。
「黙って刺される私じゃありませんから!」
「そうだったね」
ルナは一流の魔法使いだ。前文化祭のイベントであった志願制で行われた実戦形式のバトルで3位だった。優勝はカトリーヌだったらしい。見てないけど。
ということで才能に溢れた超強くて可愛いルナは僕にも勝ててしまうかもしれない。
「確かにそれは僕もピンチだったかもなぁ」
とか適当言ってたら後ろから殴られた。
「ケイト!久しぶりですね」
ルナが僕を殴ったケイトを見つけて嬉しそうに破顔する。
「……」
ケイトもそれを見てちょっと照れたように僕の背中から半分顔を出して頷いた。
「えへへ。私、あんまりお友達がいないのでケイトとお話しできて嬉しいです」
「……」
笑い合う女の子2人、花畑が幻視されるようだ。2人ともいい子なのになんで友達少ないんだろ。
てか僕お邪魔かもなぁ。
「……」
ケイトが僕の服を引っ張る。行くなと言っているらしい。
「どこ行くつもりなんですか?」
そう言って僕を見るルナも目が笑っていない。
「えーと、トイレ?」
そう言って僕は逃げた。




