4-15 真面目に調査
「レイヴンー」
ということでレイヴンにウザ絡みしてみることにした。
「ど、どうした?」
見た目に似合わず低い声だな相変わらず。
そういや元々は声が好きって言ってたんだっけ僕の前世の友人は。乙女ゲームはボイスが重要!とか言って無理やりCD聞かされたことあったなぁ。大学の講義室でCDプレイヤーのコンセント繋げるのは正気じゃなさすぎるだろで意識持ってかれて今の今まで忘れていた。
そうか、乙女ゲームは声大事なんだ、良い声の人は重要キャラかもだ。……って言っても僕イケボとかよく分からないんだよな。可愛くて耳が溶けそうな甘々美少女ボイスは好きだけど、それくらいであんまり声優とか詳しくないし。
「ねえレイヴン。最近よく聞く刃物による傷害未遂事件のこと、何か知らない?」
「知らないな」
「えー?ほんとー?ハルイが君のこと疑ってるよ?」
「な!?」
「露骨に動揺するね」
まあそれはさすがに言い過ぎだけどって言おうとしたら激しくショックそうな顔をするので訂正する時を逃してしまった。
「フリッツ探偵事務所に案内してほしーなー。お父さんが出資者なんでしょ?」
「わ、わかった」
▫
「ここだ」
「人いないんだ?」
人がいない建物だった。看板は確かにフリッツ探偵事務所と書いてある。
「今は仕事中だからな。腕はいいんだが、いかんせん地味で破産しかけていたから父が名義を貸す形で支援した」
「何か御用ですか?」
奥から少年がたたたたっと走ってきた。
「こちらフリッツさんの助手のえーと」
「リッツです。ミスタークロウラー」
メガネを指で上げて僕を見上げる。気強そう。
「1つ、依頼をしたいと思ってね。いいかな」
「もちろんです。ただウチは依頼料高いですよ。大丈夫ですか?」
「……貯金いっぱいあるし多分?」
いざとなれば悪魔討伐して元老院から金をせしめよう。
「ちなみにいくら?」
「銀貨2枚です」
「なぁんだ。そのくらいだったら今持ってるよ」
指で弾いて渡す。
「!?」
「……お金持ちなんだね」
「貿易商は儲かるからねぇ」
にっこり笑ってレイヴンを見ると、その目が昏くなった気がした。
「で、依頼と言うのは」
「今巷で起こってるナイフを使った傷害未遂事件の共通点を調べてほしい」
「ああ、それなら師匠が前に調べていましたよ。確かこのあたりにしまってあったはず」
「そりゃ良い!」
「えーと、どうやら襲撃者の方に特徴があるみたいですね。共通点は……」
「どうしたの?」
「いえ。しばらく貸してあげます。銀貨2枚もらいましたしね」
「……?ありがとう。でも少しだけでいいよ、返すのが面倒だし、1回見せてもらえればすぐ覚えられるからね」
ファイルの該当箇所を見て僕は即そのページを閉じた。不安そうにこちらを見ているレイヴンに笑いかける。
「皆襲撃前の3日前にパンを食べていたみたいだね!いやーそんなことが分かるなんてフリッツ探偵はすごいなぁ!」
「……師匠はすごいですよ」
助手くんに睨まれてしまった。
僕が笑ってレイヴンに手を振るとひとまず納得することにしたのか頷く。隙がありすぎというかメンタル弱いのが多分レイヴンのキャラとしての特徴なんだろう。少々悪い気はする。
さて。探偵事務所を出て、レイヴンに別れを告げた後、なんとなく上空を見上げる。
「クロウラー家と関わりがある人物。ね」
そりゃそうだよなと。ここまでは僕の予想通り。
探偵事務所は魔法技術こそ高いものの、この件に直接関係あるわけではないみたいだ。となるとレイヴンの父親の方か?確かにきな臭い雰囲気の男だったが。
なんか納得いかない気がしたが、考えても答えは出ないので、そのまま心にしまっておくことにした。




