4-14 BADEND回収
「スティーヴ!」
カーテンがめくられる。
「わ、ほんとにいた」
濃い赤色の髪を肩口まで伸ばした少女、ハルイが僕を興味深そうに見ている。
「ハルイじゃん、やっほー」
僕は寝返りを打って片手をあげて挨拶をした。
顔合わせしてからそこそこ時間経ってる。
「僕に何か聞きたいことがあるの?」
「うん」
思いつめた顔で頷いた。
「勉強?それとも別のこと?」
僕がベッドに座り、口角を上げてそう言うと、ハルイは顔に少し怯えの感情を浮かばせた。そういうところはエリックと違うわけね。
「勉強」
「えっ」
「嘘だよ」
瞬きをしてハルイを見る。この感情をどこに持って行けば……。ハルイはなんでもなさそうに微笑んでいた。
「今ナイフを使った傷害未遂事件が多発してるでしょ?」
「そうだね」
「犯人は誰だと思う?」
ちょ、直球だな。というかその事件まだ解決してなかったのか。もう少し短いスパンで事件を解決していくイメージだったから正直意外だ。
「その答えはレイヴンが知ってると思うよ」
裏社会に詳しいキャラって友達も言っていたし。僕にすべき質問じゃないな!知らないよ犯人。
「それは分かってる。でもレイヴンは教えてくれないからスティーヴに聞いてるんだ」
「君自身が自分で見つけた方がいいと思うけど……」
「見つからないから聞いてるの!」
「……」
ハルイを見る。真剣な表情だ。
僕を頼る前にがんばって色々調べたんだろうなぁ。僕が知っていてハルイが知らなそうなことか。
「フリッツ探偵事務所を調べるといいんじゃないかな。何かヒントが見つかるかもね」
「答えは教えてくれないの?情報を出し渋るなんて今時流行らないよ」
なかなか切れ味の鋭いことを言うなぁ。
「あはは、これ以上は知らないよ。そんな情報通に見えた?」
ハルイの血のような色の目はどうしてもアプリコットを僕に想起させる。僕の仇敵を示す色に僕はどうしても警戒せずにはいられないようだ。僕じゃない、だけど僕でしかない僕がまばたきすらせずにハルイの目をじっと見ている。
「……」
「あんまりしつこいなら首を飛ばすよ?」
「できるもんならやってみれば?」
ハルイが自信に満ち溢れた、つまりいつもと変わらない表情のまま言った。
僕がその言葉を聞いて眉をしかめた後、手のひらをハルイに向け、ハルイの首を飛ばした。
おい。
▫
「すごいな1位じゃないか!」
リエルが後ろからぶつかるように肩を叩いてくる。今のリエルは男形態なのでダンプカーがぶつかってくるような衝撃。
……ループしてるじゃないか。おいバカ僕!!『ループの検証になって良かっただろ?ハルイの死はループの発動条件の1つってことだ』そりゃそうだけどさぁ。
とりあえずエリックに勝った後で良かったよ。テストやり直しはちょっと怖いというかなんかどっかでミスしそうっていうか。今回の僕とエリックの点差って5点しかないし。
「当然だよ。……シエルいないし」
「そう言うなよ。1位は1位だろ?」
「それはそう。やっぱ僕超天才だね」
「その調子」
とりあえず前回ループと同じ会話をしておく。
「何この人ゴミ……」
ハルイが人だかりの波を抜けて僕達の前に来る。
「ハルイ、お前は何位だったんだ?」
リエルがそれを見てハルイに声をかける。
「え?私、私は31位……」
ここまでは同じだな。
「って横にいるの、ウチのクラスのヘイズくん?」
「……」
僕を見ながらハルイが言った。
セリフが変わっている。ここでセーブ&ロードって呼ばれたんだったよな。
「そうだね、僕はスティーヴ・ヘイズだよ」
ハルイを見るが、動揺した様子はない。さっき僕がハルイを殺した記憶がない?
「僕のこと知ってたんだ」
「そりゃクラスメイトだし……ん?1位のスティーヴ・ヘイズって」
「当然僕のことだよ。皆僕の栄えある1位をその目に入れに来たってわけ。僕が1位だ!!!」
僕がそう言って人差し指を立て腕を上げると周りの人から歓声と拍手をあと少しの怒号が聞こえた。ここは普通に前回といっしょ。
「君は知ってると思うけど、僕は大抵保健室で寝てるよ。君とはお隣さんだ。聞きたいことがあるなら保健室のベッドを借りると良い」
「え?」
記憶の有無を確かめるためにちょっと言葉を変えてみたが、前と同じように普通に困惑されてしまった。血のように赤い目が戸惑うように揺れている。
「勉強に関することならなんでも教えられるよ。それ以外はちょっと厳しいかもしれないけど」
記憶が無いなら、僕が答えられないようなことを質問してこないよう釘を刺しておこう。
「こいつ本当に頭良いからじゃんじゃん利用した方がいいぞ。俺はそれで留年回避した」
「あの時はギリギリだったね……」
僕のせいで出席日数との兼ね合いで厳しくなったと言えなくもなかったので、僕も必死に勉強教えた。どうにかなって良かった。
「ヘイズくんって頭良いんだね?あの自己中畜生以下のクソ王子とやり合ってるなんて」
ディスりのレベルと口汚さが上がってる……。
「エリックのことそこまで酷く言うことないんじゃない……?あ、でも僕の方が頭良いから!そこは譲れない。あとヘイズくん、なんて他人行儀な呼び方じゃなくてスティーヴでいいよ。初めて話す仲じゃないだろ?」
「そうなのか?」
「そうだったっけ?……そうだった、かも?」
ハルイが何かを思い出そうとしているのか眉間に皺を寄せている。
「その前にお姫様だからなハルイ。平民なんて呼び捨てでいいだろ」
「あはは。また頭飛ばされたいの?」
「うっ、それは嫌だ……」
ハルイが僕の言葉を聞いて露骨に動揺した。へえ、思い出した?
「じゃ、じゃあお言葉に甘えてスティーヴってよぼうかな……」
「ふふ、ハルイ。また近いうちに会えるよね。じゃ、僕は保健室に帰るから」




