4-8 リレー
「わあ」
男女混合リレーなんだ。
そういえば高等部入ってから1回もループしてないな。ストーリー始まったしもっと頻繁にあるもんだと思ってた。主人公がエンド全回収勢じゃなくて良かった。
僕は今のところストーリーに一切関われていなかった。僕自体ゲーム的にはただのモブでしかないのだから当然だ。おかげで本当にこのゲームが呪物を破壊していく伝奇系ゲームなのかも定かじゃないのは不安だけれど。
「うわ」
僕が1番嫌いな庭師の息子が僕の隣にいる!
アンナは……一応僕を挟んだ場所にいるけどすぐにでもかち合いそうな距離だ。
「ちょっと場所移動しない?」
僕があいつのことを嫌いなのはデリカシーがないとかそういう話ではない。
デリカシーがないなんて僕の方がよほど当てはまる。
なにが嫌いか。そう、良識があって常識があって、人に好かれるための演技もできて。自分が普通だと言い切れる傲慢さがあるくせに自分は謙虚だと勘違いして。その権利もないくせに内心で相手のことを勝手に決めつけてこき下ろす。そのうえで自分が悪だと認識し、勝てそうな相手にだけその攻撃性を向ける陰険さ。どれも嫌いだ。悪いとは言わない。僕よりよほどちゃんとしてると思うし。だから生理的に無理、という言葉が1番当てはまる。
アンナを泣かせたのが1番最悪最低の所業なのは疑いようもない。生理的に合わないだけなら避けるだけだ。お互いのためにならないってよく分かってるから。
「感じ悪いな、ヘイズ」
「はあ」
気づかれちゃったな。こいつの名前、なんだったっけ。もう二度と関わりたくなかったから忘れちゃった。
「またアンナを泣かせたら殺すから」
「アンナ?ああ、元生徒会長の。前から気位が高い女だったが、気が強そうなのが今も顔に出てるな」
「……」
アンナがそいつを睨む。
「まあまあまあまあ!!」
リエルがにっこりしながら手で制止するよう僕とそいつの間に入ってくる。喧嘩になりそうなのを止めに来たのか。
「スティーヴ、1回深呼吸な?ジャックくんもお嬢様を応援しに来たんだろ?お嬢様の勇姿、見れなくていいのか?」
「チッ」
「リエルずっとそこに立っといて。視界に入れたくないから」
「なんでそんなに仲悪いんだよ……」
リエルがいい感じに壁になってくれてる。ふわふわお嬢様のカトリーヌ令嬢がバトンを渡されて走る。おお、速い。これなら1番取れそう。
「がんばれー」
僕が応援するとリエルが一瞬え!?みたいな顔をした。……僕だって応援くらいする。
「ちょっといいかな」
声をかけられたので振り返るとハチマキを巻いたレイヴンがいた。1番最初に走ってなかった?バトン渡すとこくらいしか見れてないけども。ここにいていいのだろうか。
「いいよ」
「君に……その、謝りたいと思って。足引っ掛けちゃっただろ?」
本当に申し訳なさそうだ。本意ではなかったのだろうか。癖で、みたいな。
「ああ、別に気にしてないさ。この通り僕が1位で君は2位だしね」
「はは……これは手厳しい」
「家の事情とかいろいろあるんだろ?大変だね」
「……。言い訳になるが、一応事情を説明してもいいだろうか」
思い詰めた表情で言われる。本当に気にしてないのに。
「?いいよ」
「7組の友人もあのレースで走る予定だったんだ。だけど幼なじみが無理やり結婚させられるらしくてさ、私が行くべきだと言って彼は私の馬車に乗って発った。必ず私に1位になるよう言い残して……」
「そ、そうなんだ」
1人いなかったのは裏にそんな恋愛漫画みたいなストーリーが?
「まあ僕で良かったね。他の人なら呆気なくコケて今頃君はぶん殴られてるに違いない」
「本当に返す言葉もない……」
あ、ちょっと立ち直った。どうやら正しい言葉を選べたらしい。
「お、ダニエルが出てきた。そう言えばレイヴンのクラスってアンカー誰なの?」
「エリック様だ、ほら」
腕を組みながら出てくるエリックを指さした。




