4-6 短距離走
「なんで……僕が……」
「人足りないらしいぞ!!!」
「そ、そう。だからと言って僕が短距離走はおかしいんじゃないかなぁ!?」
リレーほどじゃないとはいえ花形じゃない!?
レイスに連れて行かれた先は運動場だった。短距離走を走れと。
「スティーヴ悪いな。お前が足速いってハリソン先生から聞いたもんでよ」
松葉杖を脇に抱えたいかにもスポーツマンらしい見た目の男子生徒が僕に片手を上げそう言った。
……。
「トム怪我しちゃって。お願い!代わりに出て!スティーヴが行事ごとに出たがらないって知ってるけどピンチなの!」
近くにいた女子生徒が僕に言った。
「……なんで僕?」
「本気で勝ちたいからに決まってるでしょ!」
「ダニエルの方がいいんじゃない?」
ダニエルも身体能力は高いし。細かい競技は苦手らしくてテニスは全力でラケット振って顔にぶつけてたけど。
「ダニエルにはリレーお願いした」
「あ、はい」
さてはトム、君相当足速かったんだな?
「ちなみになんで怪我したの?」
「サッカーでちょっとはしゃいじゃって……」
「馬鹿じゃないの?」
「それは本当にそう」
女子生徒がため息をつきながら首を振った。
そのままありがとうーって言いながら去っていった。他の競技があるのかもしれない。
さて、試しに走ろう。全力で走ってみる。
「速っ。俺より速くね?なんで隠してたんだよ」
「言う必要なかったからね。あと僕体力ないから1回走ったら終わりだよ。置物だよ」
倒れながら言った。今晴れだから待ってればすぐ復活できるけど当日も晴れとは限らないし……。
「てか家格で上から順に役割振るのやめたの?」
「ああ……ウチのクラスってハルイが1番偉いだろ?」
「うん」
王族だしそうなるか。
「そのハルイが全員にチャンスを与えるべきって言うもんでさ、俺の代わりは平民にしようってなったわけよ」
「へー」
もともと平民だと思って生きていたわけだからそういうことも言うのか。なるほどー。
「いいんじゃない?勝てるといいね」
「なんで他人事なんだよ」
▫
短距離走は当然僕がトップだった。ある種のチートだし1位じゃなかったら逆にびっくりだよ。
それで即倒れてケイトに担がれて休憩用テントに運ばれる……日光当たらないからちょっとズラしてほしい。
「ケイトの勇姿も見たかったんだけどなぁ」
「……」
「え?嘘つき?昨年は来てすらいなかった?……そうだったかな?ははっ冗談冗談」
「……」
ポコポコ殴られる。ケイトが本気で殴ったら多分ドゴォとか鳴ると思うのでじゃれてるだけっぽい。
「……」
ケイトが僕に下手くそなウインクをする。
そしてそのままムカデ競走に向かった。
暇だ……。
「やっほースティーヴ」
「アンナ!?」
緑がかった薄茶の髪のポニーテールを揺らしながら同色の瞳が倒れた僕を覗いている。
「見に来ちゃった」
「体育祭はいいの?」
「うん。私は競技参加してないし」
「でも生徒会の仕事が……」
「いいの!」
人差し指を僕に突き出す。
「私のことなんて気にしなくていいんだよスティーヴ。それより今は回復を優先させること!」
「はーい……」
アンナの生命力で僕も元気になりそうだ。
「レイヴンに妨害されてたよね?先生とかに訴えないの?」
「それくらいで負ける僕じゃないし」
レイヴンに足払いされてコケた。めちゃくちゃ姑息な手使うなと思ったよ。他の足速そうな子も欠場だったし。もしかしてトムもレイヴンに怪我させられたのでは?と考えてトムの何も考えてなさそうないい笑顔を思い出す。関係ないな。
そもそも先生に訴えたところで僕の言葉を聞いてくれるのだろうか。
「それは……。コケたと思ったら片手前方倒立回転してそのまま走ったからびっくりしたよ」
「ぜんぽうとうりつ?うん、むしろ人気者になれてラッキー?」
ゴールテープを切った時の歓声はすごかった。おかげで即倒れたら悲鳴上がるかなとか考えてフラフラ歩く羽目になった。ケイトが近くに来てくれたからそこで倒れられたけど、結構ピンチだったかも。
そう言えばレイヴンどんな顔してたっけ。愕然としていた気もするけど……。おおよそ攻略キャラとは思えない所業だ。僕が勝ったからギリセーフ?どう?ハルイがこんなことするレイヴン嫌い!そんな〜、とかすればどうにかなる……なるのかなぁ?
そんなことを考えている僕をアンナが無言で見ている。表情は笑っているが、何を考えているか分からない。
「いっしょにリレー見に行かない?」
レイヴンが1位の子の足を引っかけようとしている!止めなきゃ……!
間に合う
▶間に合わなかった
で今回の流れです。
レイヴンはどっちにしろ負ける。




