3-14 暇つぶし
ループはあの後あっさり抜けた。理由は不明。
久しぶりに暇ができたのでアンナとデートしようと思ったのだけど、アンナは忙しそうで誘えなかった。何をするわけでもなく僕はブラブラほっつき歩いていた。
アンナも大きくなったし僕はもういらないのかもしれない。くるみ割り人形の王子様が必要なのは夢見る少女だけ、みたいなさ。
雑貨屋を見つけた。
店の前にサボテンが置いてある。この辺りにある花屋と植物を取り扱かっているような店は今までの周回で全て見たつもりだが、こういう雑貨屋はノーマークだった。
扉を開けて店に入る。
睨んだ通りサボテンが売られている。
種類も多い。
「いらっしゃいませ!」
幼い女の子が小走りで僕に近づいてくる。
「君は……」
サボテンを僕にくれた女の子。
「?」
「あ、いや」
そういえばそのイベントあったのってダニエルが死にまくってた時か。あの回はダニエルの家までついて行って護衛してたからこの辺の道よく通ってたんだよな。体が覚えててつい来ちゃったのか。
今のこの子は僕のことを知らない。
「お兄さんお人形さんみたい。男の人なのに」
興味深そうに下から覗き込まれる。
そう言えば前もそれ言われたっけ。なんか気に入られたのかよく話しかけられて、最終的にくれたんだよなサボテン。
……サボテンって結構育てるの難しいよな。シノクラッスラとかパキラとかに育てるの成功してウキウキでサボテン買ったらすぐ枯らしちゃったんだよな……。
「はは、ありがとう」
とりあえずお礼を言った。
後ろの方から走り音が聞こえる。
「リッキー、本を持ってきた…ぞ?」
勢いよく僕の後ろの扉を開けた少年が、僕の方を見て目を丸くしている。
▫
どうやらこの少年はクリストファーにサボテンを渡していた子のようだ。
この2人は知り合いだったのか。
「貴族の少年が平民の少女と本を共有か…」
乙女ゲーっぽい……かな?よく分からないけど。5歳差くらいだろうか。そのくらいなら見ないこともない気がする。
貴族の少年と平民の少女の組み合わせ。僕が読んでいた小説の傾向からすれば男女逆なら見ないこともない、かも。それで少年が王族だったり革命を起こす奇人だったりするのだ、これが。
……僕の読んでいる本が偏っているのは僕自身よく分かっている。恋愛小説はあまり好きになれなかったのだ、どうも取り上げている世界が狭いというかワクワクしない。設定もあまり語ってくれないし。主題じゃないからだろうなぁ。結局僕は想定されている客ではないのだろう。
この乙女ゲーは壮大な話らしいから僕でも楽しめそうだけど。
「何の本を読んでいるんだい?……ふうむ昨今の資本について、か」
……幼い子供が読むような本ではないな。
小中学生の時生活の全てを犠牲にして本を読んでいた僕が言えたことでもないけど。でももうちょっと、こう漫画とかも見てたよ?
本棚を見るが小学生くらいの子供が読むには難しい本ばかりだ。
「この作者は少し思想が偏ってるんだよな……ええと、この本とかどうだい」
ちょうど懐にいい題材の本があったので渡す。
「これ貴方が書いた本じゃないか」
「そうだよ?」
「読んでいい!?」
「もちろん」




