3-12 RTA
保健室で寝ていたら、養護教諭が僕を起こして走って出て行った。
このイベントの日か。
2回前まではアプリコットの前兆が出てきた時点で、病原……アプリコットの一部を最大火力で焼き尽くしていたが、どうやらそこは静観してた方が正解だったらしい、あんな見事に無力化できるとは。僕の言う通り1回情報収集に使ったのは正しかった。
外に出る。
あたりは見回す限り真っ赤だ。これも前回と同じ。
「氷結停滞」
目に入る場所は僕が全て凍結する。
こういう細やかな気遣いが後々生きるんだよな。細やか?って僕が聞いている気がする。幻聴かな。
氷をサクサク踏みつけながら歩く。
人が見当たらない。都合はいい。
えーと前回のループではそうだ、ステラが来たら収まったんだったな。どこかにいるはずだから連れてくるか。
「僕はこれどうなってると思う?「さあ……」」
この後とりあえず教室に向かうんだっけ。
「まだ無事な人間いるかもしれないし、探してみようよ「そうだね」」
散策する。
教室に行くのはやめたようだ。廊下をただ歩いてたって会えないだろう。
「……!高等部の方行ってみよう」
えーと高等部はここの廊下渡れば行けたはず。
発見。
「無事だったか」
「スティーヴさん。あの、これは一体」
高等部も中等部と同じような状況になっているようだ。それでも無事な彼女はやはりマリスに対する特効なんだな。
「発生源に心当たりがある「そうなの!?」ああ」
「……その心は?」
「心?ついてくれば分かる。君がどうやら有効な対抗手段のようなのでな。もちろん来てくれるよね?」
そう言えば養護教諭はどこに行ったんだろうな。無事な人間を探しにこの棟に行ったのかと思っていたがどうやら違いそうだ。あの男が僕より足が速いとは思えない。
「ついて行くしかないようですね」
「よく分かってるじゃないか」
「……やっぱりそっちが素なんじゃないですか。ちょっと気持ち悪いですよ、いつもの貴方」
「な!?」
僕が気持ち悪いって言われてる。
ステラ。ステラだったよね?元生徒会長。彼女も言うようになったな。これが2年分の成長ってやつか。
「確かにちょっとあざといよね僕「あざといって何さ」」
ステラが僕の返答に困惑した顔を見せる。意趣返しでもしたかったのだろうか。とりあえずついてきてくれているようなのでそこは一安心。
「ここだよー」
扉を勢いよく開ける。
マリスがびっくりした顔でこちらを見ている。
「よっしゃ」
ステラの行動を操作!
走って右ストレート!
「待て待て待て僕。マリス殴ってるよ!?」
……そう言えば前って分離した後殴ったっけ。まあいいや。どうせアプリコットに賛同するようなやつだし多少は痛い目見た方がいいだろ。
タコ殴りでいいか。めんどくさいし。
「っと」
痛みに呻くマリスの中からアプリコットが出てくる。まるでマリスを庇うかのように両手を広げて前に立ちはだかる。
「なんだよアプリコット。まるで人間みたいなことをして」
「お前と違って私は最初から人間だよ。お前と違って。外付けの良心装置も結局お前と大差ないじゃねぇか」
「良心装置って僕のこと?ま、まあ僕もどうなるのか気にならなかったと言えば嘘だけど……実際こうやって君が出てきたわけだしね!情報収集は大切だ」
「幼気な少女を殴って良心が咎めないの?」
「咎めるよ」
僕がニコニコしている。
ふむ。アプリコットがこういうことを言うのは初めて見るかもな。
「こういう時はメタ思考をするんだ。なんで僕はマリスが殴られるのが嫌なのか。一般的に少女は力を持たないからだ。一方的な暴力はやっぱりいけないものだからね。しかし今のマリスはどうだ、力を持たない?そんなわけないよね。だから殴ってもいいってわけ。ステラをわざわざ使ったってことはそれが一番有効なんだろ?「その通りさすが僕」」
「多少マシになったと思ったのにお前ら……!」
この後どうしたんだっけ。
そうかなんか友情パワーでマリスがアプリコットに勝ったとかそんな感じだったかな。
「じゃ、あとはよろしくステラ」
「え?ってマリス!?どうしてこんなことに」
「そこの血の塊がやった」
「ちが……」
「ゆるさない」
ステラの髪が逆立つ。これは……電気?
ステラが手を向けるとアプリコットの形が崩れる。
「マリス!マリス!」
ステラがマリスを抱き抱える。今にも泣きそうだ。確かにちょっと罪悪感。
「……ステラ?どうしてここに?」
「そんなことどうでもいいじゃない。良かった……」
「……うん」
アプリコットはその光景を見て何故か傷ついた表情をしていた。
「マリス、今ならアプリコット取り込めるよ。弱ってるから」
「へ?」
「君をこんな目に遭わせたんだ。そのくらいする権利がある」
「わ、わかりましたわ?」
そしてアプリコットはマリスに取り込まれた。




