1-4 友人
「なあスティーヴ、そんなに頻繁に倒れるようで大丈夫なのか?」
「僕の心配をしている場合なの?」
なんだかんだ僕は魔王と友人としてそこそこ仲良くなっていた。人間界での名前はリエルと言うらしい。
アンナがこちらに目を向けてきたのでにっこり笑って手を振っておく。アンナと仲良く話していた女の子達がきゃあきゃあと黄色い声をあげている。僕とアンナを恋仲だと思っているのか、それとも単純に僕がモテているのか。
12歳にしては大人びているように見えるだろう僕はそこそこかっこよく見えるのかもしれない。モブ顔って要は中の上くらいだと担保されているようなものだし。まあおそらくチヤホヤされるのは今の間だけだ。楽しんでおこう。
「付き合ってるのか?」
「何?アンナは渡さないよ」
「やるぅ」
「あのさ、茶化してる場合?」
リエルのハーレム達が毎日の様に喧嘩していてうるさい。
現地妻的なノリなのか気に行ったらホイホイハーレムに加える癖にフォローもなんもしないから雰囲気が最悪だ。
教室の前でぎゃあぎゃあ言い争っているのを聞けば僕だって気分も悪くなる。
僕なんて比較にならないくらいモテるのだ、目の前のこいつは。イケメン……なのかなあ。僕にはよく分からないけど、彫刻みたいだなとは思う。
さらに何が最悪かって、頻繁に気絶する僕に友人がそうできるはずもなく、必然的にこいつとずっと一緒にいるせいで僕まで喧嘩をふっかけられるのだ。
僕と戦えば相手は多分塵すら残らないだろうけど、それでもいいのだろうか?僕はビームだって撃てるんだぞ。……あれから一度も撃ててないけど。
「単位はテストの点数さえ良ければどうにかなるみたいだし」
リエルがまだ心配そうな顔をしてくるので、ついでにそう言っておく。
「せっかくだしクラスのこと教えてよ」
学校の行き帰りを馬車に切りかえたので、今日はいつもよりもう少し余裕がある。アンナと馬車に乗って話すのも楽しいものだ。
「何を?……あー、ほら、先生のジョークとか?クラスのお調子者は誰かとか?そういうのあるだろ?」
「んー、とりあえず君がハーレムに誘った人は誰?」
顔重視で選んでいる気もするので聞いてみよう。
乙女ゲームの重要キャラはやっぱ美形な気がするし。偏見かもしれないけど、ここで聞いておくのは良いのだろう。
「お、嫉妬か?気が変わったならいつでも大歓迎だぞ」
「ははは、冗談は休み休み言えよ」
「つれないなあ。まずお前だろ」
「うん」
それは忘れてくれていいよ。
「あいつと、あいつとーそれからあいつと、ああ、あそこのも」
「ええ……」
見境なしかな?
それともこのクラスに何かあるのだろうか?
「俺が今1番気になってんのはあいつ」
指を刺されたのでそちらを見ると、レースが大量に付いた改造制服を着ている少女が目に入る。めっちゃ美少女だけどめっちゃ気が強そう。最近の流行りで言う悪役令嬢みたいな。
重要人物そう。聞いといて良かったかも。
「名前は?」
「お、気に入った?」
「え?うん。可愛い子は好きだよ」
思わず反射で答えてしまったが、そうじゃなくてだね。名前は?
「マリスって言うんだって」
「へー」
名前も可愛い。ってそうじゃなくて。
「アンナちゃんと言いちょっと気の強そうな子が好きだな?さては」
うぐ。
ま、まあそういう面は捨てきれない。いや、アンナのことは当然そんな目で見ていないけどね!?
「でもまぁ気の強い女の子がベッドでは……ってのも良いよな」
リエルがとんでもないことを言った。
「は?それ気の強い女の子である必要ある?他の属性で良くない?」
「はー、これだから素人は。ギャップだよギャップ」
今更ながらこいつは本当に12歳なのだろうか。いや、13歳でも別におかしくないけど。にしたってなあ。
「……いいだろう、その喧嘩買ってやる。表に出ろ」
そして僕とリエルは交戦した。ビームも出た。どうやら目の奥にスイッチがあるらしい。
勝敗はどうなったか?結果的に校庭が消滅したよ。
リエルの因果操作とやらで全てなかったことになったけど、リエルとは相容れないところがあるらしい。
というか乙女ゲーの世界なのになんで僕は実家の手伝いの商売と戦闘しかやっていないんだろう……おかしいな。
僕は攻撃にはあまりエネルギーを使わないようだ。ということは、僕は戦闘用の人形なんじゃ……首を振る。乙女ゲームのモブにそんな設定あってたまるか。人形ってだけでも過搭載な気がするのに。
「……」
リエルが憐れむような目を僕に向けている。
「もう動けないから運んで」
「しょうがねぇなぁ!」
魔法で運んでもらった。
▫
「ああ!君、またリエル様に運んでもらって!」
「うん、ごめんね」
廊下を運ばれているとリエルのハーレムメンバーが指をさして咎めてくる。うん、いつもの光景だ。
「すいませーん、急患入りまーす」
「ああ、いつもの」




