3-5 イベント
保健室で寝ていたら、先生が僕を起こして走って出て行った。
さすがに何があったか気になるので僕も外に出る。
あたりは見回す限り真っ赤だ。この色、この匂いは血かな。
「氷結停滞」
とりあえず目に入る場所は全部凍結しておいた。
不衛生だからね。
生き物いても解除すれば元通りになる魔法だから安心だよ。魔法は体動かすのと別のエネルギーを使うから気軽に使えて便利。
僕はポストアポカリプス系のゲームが特に好きだったわけだけど、今の光景はアポカリプスって感じだね。あはは。
……どうなってんだこれ。
氷をサクサク踏みつけながら歩く。
人が見当たらない。ただただ赤い。アンナはどうなっている?アンナが無事じゃないなら……ダニエルを殺せばいいか。そうしたらきっとループするだろう。そしてアンナには学校を休むよう伝えればいいのだ。
「僕はこれどうなってると思う?「さあ……」」
僕もお手上げのようだ。とりあえず教室に向かってみるか。
よく見ると血の中に人が入っているようだ。どれを見ても苦痛に耐えるかのように表情が歪んでいる。確認するとこれできちんと生きているらしい。これをやった犯人の意図がさっぱり分からんな。
血の色が奥に行くに連れてどんどん鮮やかになっていく。1番鮮やかなのはここ、3年5組の教室だろうか。扉を開ける。真っ白なロリータに身を包んだ華奢で可憐な少女がうっそりと笑ってそこに佇んでいる。
閉じていた目を開けると、長いまつ毛に縁取られた美しい灰色の目から血が流れて来る。
「……やあ、マリス」
僕は親しい友人に挨拶でもするように片手を上げた。
「差し支えがなければこのような愚行を犯した理由を教えてもらえないだろうか?」
「ミール……わたくしきちんと殺さないでおいてありましたのよ」
「はは、知ってるよ。安心して欲しい。きちんと彼らは元通りにしておくよ。この僕が責任をもってね」
全てを凍結した僕を人殺しとでも言いたいのだろうか。
……別にそんなことはどうでもいい。
「それより君さぁ、学校でこんなことをしてどういうつもりなんだよ?僕に勝てるわけないだろ、君ごときが」
「ええ、それはそうでしょう……そもそも勝ちたいなんて思っていませんもの。ただ、平和すぎて、つまらなくて」
そう言うとさらに笑みを深める。
「理解できないな。してもらおうとも思っていないんだろうけどさ。君は人間以下の畜生だよマリス。僕はそれでも君のことを友人だと思っているけどね」
我ながら薄っぺらいなぁとは思う。
しかしこういう言い回しが僕は結構好きだった。説得なんてする気もない自分の意見を押しつけるだけの会話。
僕は話すのが好きだ。
しかし自身の手の内を明かすような真似はろくなことにならないと知っていた。だから僕は本音を言わない。
そういうわけで、中身のないことを適当な言い回しで適当に言うのが僕の人間性なのかもしれなかった。
「自己完結しすぎだな」
アプリコットが前を向いた。
口調も変わった。
「うん?うーん。確かにそうだね」
なんだろうキャラ変だろうか。
……どうでもいいか。
「ああ……今は自分の言葉で話しているんだ。今までのはただの反射だと思ってくれていい」
「ふうん。ま、その話し方も可愛らしくていいんじゃないか?」
「……。また返答に困ることを」
「あはは、ごめん適当言った。忘れてくれ」
さて。
「出てこいよアプリコット。僕が叩き潰してやる」




