2-11 名探偵
「分かるさ。金髪の女子生徒、ティアを10秒見ていたな?他の生徒からはすぐ目を逸らしていたのに。金髪の生徒を探していたのは一目瞭然。それに君達は5組だろう?わざわざ上の階まで来たってことはそれ相応の理由がある」
僕達が黙っていたら得意げな顔でベラベラ話し始めた。
「つまり、世紀の名探偵、ダニエル・インスティゲーターを訪ねて来たんだな!」
ビシッと僕を指さす。クソ目立つリエルじゃなくて僕にターゲット絞ってるのは確かに鋭いな。
「名探偵って何?」
「ちっちっちっ、分かってるよ。オレに解いて欲しい難事件があるんだろう?」
「……うーん」
ダニエルは指を揺らしている。
「ひっきりなしに服の袖を触っているな。そういう時は大抵何か大きな事件に直面している時だ」
キメ顔で僕に言う。
理由との紐付けが微妙だけど推理の結果自体はいい線行ってる気がする。正解が分かるけどその理由自体は分かってないって感じなんかな。無意識に思考回転させてるタイプ。前世の僕もそんな感じだったから分かるよ、うんうん。
低身長なのもあって可愛いと認識できる。この段階なら全然僕のストライクゾーンの範囲だ。ここから大きくなるって考えると途端にそんな気分じゃなくなるけど。
確かにこの子が成長したらあんな感じになるかも?
「そもそもこいつの名前はダニエル・シューマンだぞ、スティーヴ」
「あ、そうなんだ……」
めっちゃモブみたいな名前。
シューマンってことは安直に靴屋の息子なのだろうか。
「あー、今モブみたいな名前って思ったろ!」
「思ってないよ?」
推理外しまくってるくせにこういう時だけ正確なの良くないよ。
「スティーヴ・ヘイズだって大概モブみたいな名前だろうに」
「僕はモブだからね」
モブみたいな名前で当然なのだ。
「僕君が探偵だって知らなかったんだよね。だから解くべき事件とかも、ないよ?」
「なんだとぉ!?オレに推理してほしい、とかじゃない、の?」
「ないです」
今僕が困ってる話言ったところで信じてもらえるとも思えないし。
名前が普通すぎるのが気になるけど、ミステリー要素のあるゲームに探偵キャラはすごく攻略キャラっぽい気がする。これは正解なんじゃない?名前覚えてないのが悔やまれる。
表情をコロコロ変えてしょんぼりしている目の前の少年からは愛嬌みたいなものを感じる。僕にはないものだなぁ……。
「ダニエルはこの通り面白いやつで有名人なんだ」
リエルが首を傾げながら言った。
「ごめん。僕基本保健室登校だからさ」
「知ってるから気にしなくていい。授業に出てないのに毎回2位か3位を取ってるのすごく尊敬してる」
真っ直ぐな目でそう言われる。
定期テストの話か。これは僕が悪い流れだな?
「別に……僕の頭がいいだけだし」
「照れ隠し風自慢やめよう。な?」
授業に出てても1位を取れる気は全くしない。満点だぞ満点。人間じゃないよシエルは。
「探偵としてのオレに用がないって、オレになんの用だったんだ?」
本気で疑問らしく、困惑した顔で聞かれる。
「一応ね。最近身の危険とかなかった?」
攻略キャラじゃなかろうとサブクエにちょうど良さそうなキャラだし見張っとくのは良さそうだ。ってことで僕も逆に聞いてみる。
「な、ななななな無いけど?」
「……」
あるねえこれは。
「なんか危険な依頼でも受けた?」
「危険ない!安全、オレ」
「うんうんそうだね」
めちゃくちゃ動揺しまくって目泳ぎまくってるけど大丈夫か。
……人だかりができてる。ちょっと目立ちすぎたかも。
「リエル、ここまでありがとう。人分散させるために1回遠く行ってくれない?」
「可愛い顔でなんてこと言うんだ」
これリエル見に集まって来てるんじゃないの。
僕を見て嬉しそうな子達は多分レアキャラ見たみたいなテンションだろう。一応手を振っとくか。
昼休憩終わっちゃうよ、どうしよう。
僕が、洗脳するから諦めていいよと言っている。何?洗脳?
……。
「依頼、手伝おうか?」




