2-9 攻略
「来たなスティーヴ」
リエルが言う。
まるで挑戦者みたいな顔をして僕を見ている。僕が挑戦者なのに。
「えーなんだよ。僕達友達だろ?」
「どの口が言うんだどの口が!」
指をさして批難してくる。
まあ……そうか。
「僕は君を倒しに来たんだ、悪意の魔王。もう1回聞くけど先代から僕のこと聞いてないの?」
「悪いが聞き覚えはない。何しろ先代は俺が倒したのでな」
「なるほどね」
先代が指名したわけではなかったのか。
僕がイマイチ分かってなかった情報も教えてくれるようだ。
これはボーナスタイムでは?
「……。君は皇帝の敵か否か」
咄嗟に質問を思いつかなかったので、雑な質問をした。
「皇帝?どこの?」
「今のなし」
「お、おう」
場所によっては敵なのかよ。
「とりあえず王国の敵になる気ある?ほら学園がある場所の」
「ない」
「そうかそうか……え、ないの?」
人類の敵じゃないの?そういうつもりで元老院と真面目に魔王討伐やってたんだけど。
「そもそもあの国の中枢乗っ取ったのは、腐敗してたからだし……」
「え?正義心から?魔王なのに?」
悪心王って魔界で呼ばれているらしいのに?どうやったらそんな呼び名になるんだよとも思うが、ルイスの犬化洗脳のあれ思い出したらさもありなんという気分になってきた。
「ゴホン。まあいいや。やること変わんないし。気づいているかい?」
「そりゃあな。俺の配下は軒並み倒された……お前が俺を爆殺すればもう終わりだ」
「よく分かってるね。そうだね、君に選ばせてあげる。今ここで僕に頭をとばされるか、僕のアンナに永久の服従を誓うか」
僕がここから手を加えなくても問題なく魔王を殺す手段はある。だからこそリエルはここで頷かざるを得ないはずだ。何かをする時は保険をとらないと。
「君は悪意を持って何を為す?わざわざ正式な手順を飛ばしてまで国を得て」
「そりゃお前、俺は人間共の規則に従う必要なんてないんだから嫌がらせだろ」
「僕は君のそういうところが嫌いだよ」
リエルは本当のことが分かっているくせに微妙にズラしたことを言ってくる。
「ごめんって。……。わざわざ聞くようなことでもないと思うがな。俺さ人間が嫌いなんだよ。だから無様な目にあって欲しいわけ」
「なるほどね」
どうりで僕に分からないわけだ。
「……」
「どうした?」
「いや……うーん。いいか。で、アンナに服従してくれる?」
「それはちょっと……」
「は?」
「ま、待てって、な?落ち着け!大丈夫だ、アンナちゃんの不利益になるようなことはしないから!」
「それならいいけど……」
▫
「魔王はこの国に侵攻する気がないようです」
城で待っていた元老院の面々に、勇者御一行がそう言う。
魔界から帰るだけなら僕が手を貸さずとも容易に行える。
「お疲れ様。報酬はしっかり払われるだろう」
貴族位の再授与も行われるとか。
平民と言いながら元老院が頼るだけあってこの勇者御一行は元貴族の末裔だったりする、らしい。
ここまで頑張ったのだからそれくらい手に入れて当然だ。
▫
そして当然のように時間は巻き戻った。
ちょうどリエルが僕と入れ替わりで学園から消えて魔界に行ったタイミングのようだ。
今回に限ってはありがたい。なんか全部リセットしたい気分だったし。
「やあ魔王。君の攻略法を見つけたよ」
「……は?」
魔界に機嫌良く襲来して来た僕を魔王が冷や汗をかいたような顔で見る。
「ふふ……僕が国のバックアップを受けて、強い元貴族を集めれば君なんて容易に倒せるということさ」
「そんなことする必要ないだろ!俺なんて一撃で消し飛ばせるって知ってるからな!何が目的だ!」
「え?……とりあえず支配してた国の地域の貿易再開してよ」
「そうだよな、わか……え?」
魔王が手を挙げて降伏を示そうとして、僕をぽかんとした顔で見る。
「そんだけ?」
「うん。だって僕達友達だろ?」
「友達にする所業かよこれが」
「ごめん。だってほら、アンナが魔王倒して欲しいって言うからさ。やっぱアンナの王子様としてはこう、ねえ?」
「俺をダシにしたのか」
「ダシ?まあそうとも言う、のか?」
リエル討伐に結構時間かけてたからアンナと会ってる時間少なくなってるけど。まあ最近は学校も行ってるしデートもした、楽しかった。
「あと女の子に犬化の洗脳するの僕良くないと思うなぁ」
「う」
「ルイスにちゃんと謝罪しておきなよ?」
「わ、分かった」
「ふうん。それじゃあ僕はもう行くね」
帰るために装備を調整して空を飛ぶ準備をする。
「結婚して」
「嫌だ」
いつも通り……と見せかけて、そういえばこの会話、前回のループではしてないな。
何か変わったのだろうか。




