2-7 雑談
はあ……。非常に不愉快だが、ルイスの時間を巻き戻し、事情を聞くことにした。
「ああ、あれは魔王だったんだな」
ルイスはどうでも良さそうな顔で言った。
何をされたかも今自分が何をしていたはずだったのかも分からないらしい。不幸中の幸いか。
口を開くとざっくばらんな感じの女の子で犬だった時とのギャップがすごい。
「そういうことだろうね」
「アホくさ。こんなの人類に勝てるわけないじゃないか」
「人類の強みは何か知ってる?」
「知能の高さ?」
「……。いや、確かに他と比べれば汎用性は高いのかもしれないけどね!そういうことじゃないよ。そうだなぁ。しぶとさとか、思考パターンに違いが出やすいとか……。生殖能力はゴミだから除外ね」
この世で1番生物として優れている存在を聞かれたら、僕は虫のどれかだと答えるだろう。
あの生殖能力の高さ、丈夫さ、大きさ、機動力、そうして食料が無くなれば、同族食いをする躊躇いのなさ……生物として完璧だ。
完璧だからといって、僕が何か思うわけではないけど。
話が逸れた。
「その強みすら虫と比べれば雑魚に等しいが……虫は人間のために動いてくれないしね。当事者は人間だ。そうして敵は悪魔、いや、魔王だけかな」
「今1番繁栄しているのは人間だ」
「ん、うーん。いいか。そういうことにしておいてあげよう。そう言うのも人間の1番の強みをまだ言っていないからだ。いいかい?人間の1番の強みって言うのはさ、慣れることだ」
「は?」
「そんな目で見ないでほしいなぁ。歴史を省みればすぐに分かることだよ」
ハーレム、永遠に愛を誓う、群れる、1人、アマゾネス、森。そうして、極寒の地。砂漠。
「人間はどこでも暮らせるんだ。そうしてどんなに偏っていても上手くやれるんだ、やれてしまう。魔王の勝利条件は人間が存在しながら、人間を消滅させること。しかし、人間が人間たる理由は……慣れること。魔王に従わせられる運命に、慣れてしまえば魔王の負けだ」
悪魔は人類に仇なすために存在すると言っても過言ではない、らしい。だから性質からしてそれを求める。
別に放っておいて良い程度の脅威ではあるけれど、アンナが殺してほしいっていうんだからしょうがないよね。
「とはいえ、そういうのは嫌いなんだろ?君達は。バッドエンドって言うんだろ?だから僕が手を貸そうって言ってあげているんだ」
僕は昔からバッドエンドに対して思うところがあった。
バッドとは一体何なのか。
「何を言っているの?貴方も人間でしょう!?」
「はは、アハハハハハハハ!」
おい、僕。そこは笑うところじゃないと思うんだけど。
僕の仲裁が聞こえないのか笑い声は止まらない。
「何がおかしい!」
当然ルイスはムッとしたように僕に抵抗する。
「君にはこの僕が人間なんていう無知蒙昧の生き物に見えるのか!それは全く面白いな!しかし安心したまえ、愚か者。僕は人間のことが好きで、愛している。これは人間に手を貸す理由になるだろ?」
「貴方のことが何も理解できない。私には貴方は人間に見える」
「ふうん。そう見えるならそれでもいいさ。今はもっと大事なことがあるからね。君は魔王討伐に参加する気はあるかい?」
少し話を外しすぎだ。
「……いいけど」
僕に任せた説得も割と上手くいって僕は困惑した。




