2-5 3人目
サーノスくんには、肉体の自動再生機能をつけておいてあげた。
魔王討伐のメンバーには加わってくれるようだ。
「僕は今とってもいいことをした気分だ!」
気分も爽快である。
「強くはあったが、魔王に対して有効打になるかと言うと微妙だな。前回の精神病患者の方が魔王に対してはずっと良い。「物理的にはそんなに強くなかったけど、精神的には強いんじゃないのかい?「いやどうだろうな……あれはそういうものでは無い気がする。もっとこう、シンプルでそれでいて最悪な……。「ああ、それが二面性ってことか。「ま、元の人格はだいぶマトモなんだろうが、生まれ持ったスキル。特質?に引っ張られて歪んでいる。見てられないな」
独り言をつぶやく。
「何1人で会話してんの?」
眠たげな少年に話しかけられた。
灰を被ったような髪はストレートだけどボサボサ、綺麗なエメラルドグリーンの目の下には深い隈。丈の合わないスーツを着て、頭が取れそうになってる人形を胸に抱いている。記憶よりかなり幼いけどこれは分かる。いた、攻略対象に!
「ああ、こうやって1人ですり合わせをすると、情報がまとまるんだ。暇つぶしにもなるしね」
「歩きながら暇つぶし……お兄さんどうかしてんじゃないの」
「ぐっ」
否定できない。
しかし如何なる時も思考していないと、頭がおかしくなりそうなのだ。仕方ないじゃないか。
時間を無駄にしているという強迫観念から逃げられない。気分が悪くなる。
ってそうじゃない。僕ではなく今は目の前の少年のことだ。
当たり、当たりだ。ようやく当たりを引いた。
リストを見る。
人形使いのリール。人形を熱心に集め続ける少年。見るからに厄ネタだな。あのゲームはバッドエンドがやばいらしいと聞いてはいたけど、攻略キャラからしてやばい感じか。立ち絵の時点で気づけ?それはそう、なんだけど。立ち絵だと髪はちょっと跳ねてるけどまっすぐだったし服も制服だし。胸ポケットからなんか怖い人形出てない?ってくらいだった気がするんだよ。それくらいならちょっとしたアクセントってことで。
……リストに少年少女が多いのは、おそらく10年後も視野にいれているからなのだろう。
少女をまだ訪ねていないのは単純にこの辺りにいないからだ。
確率というものは意外とあてにならない。
「君に会えたから、暇つぶしはもういいんだ」
「そ、そう……」
距離をとられた。
「ええ……傷つくんだけど。僕は怪しくないよ?君が僕を害そうとするなら少し君に手を加えるけど、それは当たり前だよね。誰だってそうする」
「お、おれに何をするつもりだ…!」
予想外に怯えられている。
「君は自分自身を鏡で見たりしないのかい?常識的なのは悪いことではないけれど、魔王討伐には適さないかな」
不気味さでいえば、少年の方がずっと上だ。
可愛らしい、しかし目がくり抜かれた女の子の人形を抱えた、仕立てのいい服を着た不健康そうなやせぎすの少年。
そうして、なんでもない農村を、たった1人で歩いている。
矛盾を抱えすぎているが故の不穏さが彼の異質さを際立たせている。
「は……?」
「ま、いいだろう。それは結局僕には関係ないことだ。そうだな。君は魔王討伐に参加する気はあるか?」
「ないな」
「そうなんだね……残念だよ」
じゃあどこでゲームの流れに行くんだ?気になったが、とりあえずここにいることが確認できたからいいか、と思うことにした。




