1-2 入学準備
僕がこの家に来てから2年が経った。
「ピーマン嫌い、スティーヴ食べて」
「ピーマンの美味しさが分からないとはどうやらまだまだアンナはお子様のようだ。この苦味がいいんだよ」
ひょいとフォークで刺して食べる。どうやら僕には食事を食べる機能も付いているようでこうしてピーマンを食べることもできる。アンナが食事は一緒が良いと言うので、僕も家族の食事の席に着くことが許されていた。
「む。私が食べる!」
「アンナは立派なレディだなぁ」
「そうでしょ!」
文字通り苦虫を噛み潰したようかのような顔でピーマンをもしゃもしゃ食べているアンナを眺める。
「……」
なんとも言えない顔でアンナの父親、ニックさんがこちらを見ている。どうやら貿易で成功した商人らしく、この家にはたまにしか帰って来ない。今日ここで会うのも半年ぶりくらいだ。
「そう言えば、アンナ。そろそろ学校に通うけれど準備はできているの?」
「スティーヴが全部やってくれたよ」
「……あんまり甘やかさないでちょうだいね」
あ、はい。
「そう言えばマリーさん」
アンナのお母さんの名前がマリーだ。
「僕、アンナが通う学校の特待生枠で受かったので通いますね」
「……ん?」
「学費免除です!」
「そ、そうなの?」
「中等部の特待生は相当頭良くないと入れないんじゃ……」
「だから僕の準備のついでですよ。ほら、アンナの手伝い」
これなら甘やかしの内に入らないよね?
どうやらこの体は性能が大変良いらしく、覚えようと思ったものは全て覚えられる。処理能力も高いのか思考速度もガンガン上げれる。1時間の試験時間があるとすれば僕だけ最大10時間ある感じ。そりゃ余裕だよね。そもそも中等部の試験だし。もともと大学生だった僕にはお茶の子さいさいだ……とも言えないのが辛いところだな。中学の勉強って覚えている範囲が狭いから上の学力目指すととにかく頭使うんだよなー。
なんて呑気に考えてたらニックさんとマリーさんがコソコソ何かを話している。
と思ったら2人が僕の方を向いた。
「本当は!私がアンナについて行きたいところなのだが!それはかなわない、学費も稼がねばならんし……」
「分かっていて何よりですわ」
この夫婦はいつでも仲が良さそうで好感が持てる。
アンナの上に年の離れた兄がいるらしく、多分結婚して結構な年数が経っているはずだ。
なんだかんだ2人がアンナに甘いのも遅くにできた子が可愛い、ってところもあるのかもしれない。
「私の代わりにアンナを守ってくれないか」
「最初からそのつもりですよ」
ガッツポーズをしてみせる。
アンナの通う学校。ネルショカ学園ってところは多分乙女ゲーの舞台になっていた場所だ。何分うろ覚えだが……多分ここで僕も通うのが正規ルートなんじゃないかな。つまりアンナを守るために行動するのはゲーム的にも正しいと。騎士みたいでちょっと楽しみ。
乙女ゲーの主人公は友達がプレイした画面を本当に一瞬しか見てないけど性格キツそうな美人だった気がするんだよね。なんか先代王の弟の隠し子?とか言っていたような。発覚して急に貴族や金持ちの子どもが通う学園に転入させられて……みたいな。ソシャゲなので名前はプレイヤーが任意で考えるスタイルだろうし現状どこにいるかは不明だ。まあアンナではないことは確かだ。髪の色目の色からして全く違う。そもそも主人公はストーリーからして多分シングルマザーの家庭だろうし。
主人公はどう見積もっても小学生には見えなかったしゲームは高等部からスタートなんだろうな。
だからと言って僕がすることって別になんにもないんだけど……。
……ん?そう言えばこのゲームってエンド分岐形式で攻略対象が死ぬルートもあるとかなんとか友達が言っていたような……。推しが主人公庇って死んじゃったよーとか泣きつかれたこともあったなそう言えば。もしかして結構危険が多い世界なのかな。乙女ゲーって殺伐としてるんだなあ。
じゃなくて!僕も死ぬかもしれないし、なんならアンナも死ぬかもしれないんじゃ。それは嫌だ。どうにかしてこの平穏を守りたい。
「僕が絶対アンナを守るからね……!」
「え?うん!ずっといっしょだよ!」
◇◇
「お前は誰だ」
悪魔が言った。
人型の悪魔だ。他の悪魔が恭しく付き従っていることからして強い悪魔なのだろう。
「僕は……崩落人形って前は名乗った気がするね。昔の文書とかに残ってないかい?」
今は外部装置も手に入れてエネルギーに余裕があるので、ニッコリと笑う。
一応友好的であることを示すべきだと判断した。
「……。悪魔に紙を残す習慣はないんでな」
「そうかそうか。では───────死ね」
とりあえず、波動砲を打つ。
煙が晴れると、無傷の悪魔が立っていた。
どうやら物理攻撃は効かないようだ。
ふむ。
もう1回右手を構えなおす。
「ま、待て待て!」
「……」
追撃を放つ。
ちっ精霊砲も効かないらしい。
「よく分からない理由で家が壊されちゃたまったもんじゃない。話し合えば分かるはずだ、な?」
精神体への攻撃……効くようだ。
前を見ると頭が無くなった悪魔が。
……。ちょっとやりすぎたか。
時間を巻き戻す。
腕もグルグル回るギミック付きだ。
正直いらないと思う。
「な、今俺の頭が───────」
「もう1回頭を吹っ飛ばされたくないのであれば、さっさと要件を言え」
「な、な…」
「僕は今イライラしているんだ、さっさと答えろ」
もう1回吹っ飛ばす。
そうしてまた時間を巻き戻す。
「こんなことする理由は?って聞いてんだけど!?俺最初から要件言ってる!その手を下ろせ!?」
「……」
仕方ないな。
「攻撃用の追加装備を集めている。入用なんでね。主に王城の中に保管している。取りに行きたいからどいてくれないか?」
「他人事感あるなぁ」
僕は兵器として開発されたあと、開発者が蒸発、戦力を奪われ、もとの目的を忘れ、暗殺兵器として活動させられていたなか……彼に出会った。
僕は彼と偉大なことをなそうとしていて、……頭が痛い。
久しぶりに外に出たら身を動かすためのエネルギー生成パーツすらないと来た。だからこうして予備を取りに来ている。
「さて、どいてくれるかい?僕は世界最大火力の保持者だよ?今も更新されていないはずだ。敵に回していいこともないと思うけど」
「……。分かったよ。1つ条件がある」
「……」
「無言で首吹っ飛ばすのやめろや!」
「何?」
「俺もついて行っていいか?」
「なんで?」
「ここ俺の家だから」
ふーん。
前の住人の気配がいないと思っていたが、代替わりしたのか。じゃあこいつが今の魔界の王なんだ。弱いけどまあ先代も弱かったしね。
城の中に入る。
「下に埋まっているからね。破壊するよ───「やめてくれません?」」
止められた。めんどくさいな。
「こういうのは謎かけがつきものだ。僕も少し趣向を凝らしたくてね、当時の魔王に依頼したのさ」
「え……?」
踵を3回鳴らす。
床に文字が浮かび上がってくる…裏切りの女神は?
「こんなの謎かけでもなんでもない。答えはエリス」
床が開いた。
当時の魔王は謎かけが好きな人だった。
謎というより普通に問題で拍子抜けしたが、何かを暗示しているのかもしれない。
お、あったあった。
これで魔界への用は終わりだ。
前世で鬱ゲー好きなタイプなのもあって麻痺してますが、乙女ゲームと言うより恋愛要素のあるシリアスな女性向けゲームって感じです。プレイアブルキャラは4人でヤンデレ多めですがスティーヴはそれを知らない。




