2-1 無計画
2年生になりましたが、スティーヴはしばらく学校行きません。
「やあ、元老院の皆!初めまして。僕はスティーヴ・ヘイズです。よろしく」
国王陛下に魔王討伐を手紙で進言したら、元老院に入れてくれた。
「白々しいわ!」
口調に方言の混ざっているらしい老婆がそう言う。
彼女も僕に比べればかなり若いわけだけど、この長らく女性が入ることを禁止されていた元老院の一員として選ばれた傑物だ。
「魔王を本気で倒しに行こうと思う」
「頼もしいのう」
「当たり前だよね。僕ってば結構偉人なんだよ?なんならもっと敬われて然るべきだ」
「なんというか他人事じゃの」
そうだね。
「まず第1に────僕の魔王への相性はものすごく悪い。おそらく先代が僕への対策で彼を指名したんだろう」
指を1本立てる。
魔王は知らなさそうだったが、先代と僕は既知の仲だった。知識の継承は行われないらしいが、あいつはかなり慎重だった。僕のことを警戒してても全然おかしくない。
好戦的な現魔王を指名したばっかりに今僕に攻略方法を考えられていると知ったら頭を抱えるに違いない。そう思ったらちょっと楽しくなってきた。まあもういないけど。
「ま、これは大丈夫だ。この僕にかかれば魔王への特攻兵器なんて簡単に作れる」
「そうなのか……」
元老院の1人が興味深そうにつぶやく。
む。こいつはレイヴンをけしかけた第一容疑者のテールランプ教授。証拠不十分だから尋問できないのが残念だ。
「第2に……これが問題なんだけど、魔王っていうのは単なる王とは違うんだ。なんというか、契約みたいな。負けたら必ず従うと言うか……そういうことだね」
指をもう1本立てる。
悪魔の文化を人間に合わせて説明するのはなんとも難しい。
「魔王を安易に倒そうものなら、魔界から悪魔がわらわら出てくる可能性が高い。いや、僕にかかれば殲滅可能なんだけどね?ただ人間も多少は巻き込まれるだろう。僕は別にどうでもいいけど、嫌でしょう?そういうの」
僕はアンナと僕が無事なら別にどうでもいいのだけどこの人達はそうもいかんだろう。
「ふむ。最終手段としては良いかもしれんの」
「だろうね。君ならそう言ってくれると思っていたよ。そこで僕が提案するのは───────」
▫
そういうわけで、僕は魔界に来ていた。
「m-13」
悪魔を掃討していく。僕に教えてもらったので攻撃もある程度できるようになったよ。
別に何も感じない。
ただ攻撃しているだけ。
「ふふふ、……つまらないかもしれない」
ただ一方的に蹂躙するのって作業だよね……。
「大分減ったような気がする」
「……やあ崩落人形。少し暴れすぎではないか」
大きく黒い虫のような生き物が二本足で歩いている。前足を挨拶するかのように上げる。
◇
「会稽公。久しぶり」
かなり前だけど会ったことあるな。
僕の言葉を否定する様子がないので、呼び名は変わっていないようだ。
「君は魔王に負けていないし配下でもないだろう?僕を止める理由なんてないはずだけど」
そもそも負けるはずもない。
「お前、少し様子が変わったか?」
「僕は変わらないよ」
「……それもそうか」
「それでなんの用?」
「このまま魔界を荒らされると普通に困るのでな」
「なんで?」
魔界は悪魔により作られている。
魔界があるから悪魔がいるのではなく悪魔がいるから魔界がある。文字通り。
原初の魔王がそう決めたらしい。
いや、最初からそういう性質だったのか。
どちらでもやることは変わらない。
悪魔が減れば減るほど魔界が住みにくい場所になるのは間違いないのだ。
ただ納得いかないのは、目の前の悪魔程の強さになれば多少悪魔が減ったところで差なんて感じないだろうということで。
「美味い飯を作ってくれる者がいてな」
「そうなんだ。それがど……いや、なるほど」
今後その美味い飯が食べられる機会を失いたくないのか。
強い個体であるこの悪魔がそこにこだわる理由は分からない。
「悪魔は食べ物なんていらなかったように思うのだけど気のせいだったかな?」
「お前は本当に変わらんな」
「そうかもね。しかし君の持つ性質は復讐だ。まだ起こってもいないもののために動くとなると、おそらく何もできないと思うよ?ま、本領を発揮しても時間稼ぎにもならないだろうがな!」
そうしてこの強い悪魔が倒されれば、魔界も機能しなくなっていく。
「ああ、いい。戦おう」
「うん。n-31」
まるで何もいなかったかのように消滅した
「さて……」
基本的に魔王がいなければ個人主義である悪魔が徒党を組んで来るとは思わない。だけど今は魔王がいるわけで。
「はあ……、やっぱり来てる」
これを全て倒すのはなかなか大変だ。
ため息をつきながら、さっきの悪魔を、時間を戻して生き返らせて逃げることにした。せいぜい時間稼ぎになってくれ。




