1-18 目標
「つまり君の記憶では未来の事象含めてゲームとしてプレイできる環境があった、と」
「そう、そういうこと」
さすが学年2位の頭脳。理解が早い。
「未来視みたいなものじゃないか。本当にいい拾い物をしたね。やっぱキスしとく?その先もしていいよ」
「それただの自慰じゃない?」
「言えてる」
笑いのセンスまで僕と同じだなこの僕。本当に僕と同一存在なのか……。
「僕はそのゲームプレイしてないから断片的なことしか分からないけど」
「いいんだよそれで。未来視っていうのは本来そういうものだ」
そんなもんか。
「あ、そういや言ってなかったけど僕は本来無性だからね。追加装備とかで男にも女にもなれる感じ。女の僕が良いならそれ用の追加装備持ってくるけど」
……なんか薄々そうなんじゃないかと思ってたよ。
急に動けるようになったり飛べるようになったり!装備取ってきて付け足してたんじゃないか!
「いらないよ。僕はアンナの王子様だろ?下品な物言いもやめよう。僕もそういう下品な笑い好きだけど」
「……。そうだね」
なんとなく分かってる。僕がこの顔を好きなように向こうの僕もこの顔が好きなのだろう。正直今でもめちゃくちゃ好きだ。このキャラが実装されたら僕はこのゲームをやるつもりだった。そのくらいこの見た目が好きだ。
まだあんまり知らないけど性格も好きになれそうで、本当に良いキャラだなと思う。
でもこれの行き着く先ってさ、結局のところ自己愛にしかならないんじゃないかなと僕は思うんだよなぁ!
「あと共有しておくこと……そうだ。僕、元老院のゲストでたまに情報共有しに行くから話しかけられることあるかも」
「……そ、そう」
僕って本当にモブなのかなぁ。
でも友達はモブって言ってたしな。
今もメインに関われてそうな感じはしないし、人気あるから設定盛られただけのキャラって感じの印象は受けるけどさ。実際人気はあった。ファンアートたくさんあったし。中身バレでむしろ人気落ちるまである。中身がないからこそ夢が詰め込める的な。
メインストーリーってどんな感じなんだろ。そもそも何を目的として話が進むゲームなんだ。ミステリー要素があるとか書いてあったような気もするけど。
「僕の最大目標は、僕とアンナが平和に暮らすこと、でいいんだよね?」
「もちろんだ。さすが僕、よく分かってる」
向こうの僕が満足そうに頷く。目標が一致しているなら何も心配することはない。
上手くやれそうだ。
▫
「あー疲れたー」
アンナが帰ってきて、そのままソファに沈み込む。
「おかえりアンナ」
ホットココアを机に置いておく。
「スティーヴもお父さんのお仕事の手伝い大変でしょ?いいよ私のお世話しなくて」
「いいんだ、どっちも僕がやりたくてやってることだから。うん、アンナが望むなら商会をもっと大きくするよ、もちろん世界トップだって!」
「ふふっ。……どうしてあなたは私にそこまで協力してくれるの?」
なんとも思っていなさそうな、それこそ軽口を言うような表情でアンナが聞いてくる。僕が離れることなんてないと確信しているのだろう。その信頼が僕は嬉しい。
「それはアンナが僕の欲しいものを全てくれるからだね」
「そう?」
ちょっと嬉しそうにアンナが笑う。
「ねえスティーヴ」
アンナがホットココアに息をふきかけ冷ましながら僕を見る。
「まだ周知されていないけどアウフレイ王国が魔王の手に落ちたんだって。お父さんが手紙で教えてくれたの」
……。
魔王って言うだけはあるのか。
じゃあやっぱりリエルはゲーム内の敵なのかもしれない。このまま野放しにしたままでいいのだろうか?
「魔王は貿易に応じてくれるのかな」
アンナがココアを飲みながら、顔を下に向ける。
重要な取引相手がその国にいた。取引できなくなるとなると、赤字が大きくなる。……もう商会も大きくなったし、潰れはしないと、思うけれど。
「会話が通じない相手じゃない。大丈夫だと僕は思う」
「スティーヴがそう言うならそうなのかな」
アンナはココアから目を離さない。
「……アンナは僕に魔王を倒して欲しい?」
「……倒して欲しいと思っているのかもしれない」
「いいよ、アンナが望むのなら、僕は魔王だって倒してあげる」
相性は恐ろしいくらい悪そうだが、僕も1回本気で戦ってみたいと思っていた。
完封勝利をすることができたら気持ちいいだろうな。




