1-17 事実確認
「期末テスト終わったぁあ!」
リエルが雄叫びを上げる。
僕としても嬉しい。だってこれ、ループの心配無くなったってことだろ?前回は期末テストの前日に巻き戻しが来て5月飛ばされたわけで。
何があったのか知らないけど1回ですんで良かった……!こういうのって何回も試行回数重ねるものだと思ってたから本当に良かった……!
「そう言えばスティーヴって前回の期末テスト何位だったんだ?」
「2位だよ」
「うわっ」
「なんで引いてるんだよ」
特待生なんだしなんにもおかしくないだろ。
「1位じゃないのがなんか生々しくて嫌だ」
「わけ分からないこと言わないでくれる?」
ちなみに順位は廊下に張り出されるので、僕の順位は知れ渡っている。あれからリエルのハーレムメンバー達からの視線もちょっと和らいだ気がするのはもしかしてあれで認められたりしていたのだろうか。何をかは知らないけど。
1位はシエル・ミラーヴィジョンという女子生徒だ。満点だった。僕は6点差で負けた。
大概チートな僕に勝つとはすごいやつだ……。
「テスト終わったから言いたいこと言うんだけどさ」
「うん?」
「お前二重人格だよな?」
「ん?」
にじゅう、人格?二重人格。僕が?
「……そうなの?」
「自覚ねえのかよ」
「確かに僕、かなりに頻度で気絶してるしその間に他の人格が出てきててもおかしくない、かな」
寝てる間に見知らぬ建物へ移動していたこともあったし。
「飲み込みが早えな、おい」
「そりゃ学年2位の頭脳だし」
まあ僕、元からあんまり自己同一性とか興味無いし。だからこそ転生って概念もすぐさま受け入れられたところがある。これは前世からの僕の特徴、なのかもしれない。
他人の望む僕になろうと思いながら僕は生きている。それが1番精神的な充足が得られるから。
◇
「あの、さ。僕にはちゃんと後で説明しようと思ってたんだから、勝手なことしないでくれないかな?」
「崩落人形の方」
「首飛ばされたいの?」
「待て待て、な?もう片方のスティーヴもそんなの望んでないって」
「チッ」
実際その通りだろうので、舌打ちして苛立ちを押さえつける。
「二重人格ではないよ。そこだけ訂正しておく。僕は人間じゃないから人間の症例は当てはまらない。あっちも間違いなく僕なのさ」
それだけ言って立ち去った。
もう魔王の顔は見たくなかった。
▫
知らない間に家に帰ってきている。
もう1つの人格とやらがあの場で出たのだろう。ということは主導権を握っているのは向こうなのか。
「鏡の前に行って」
僕の意志とは関係なく口が動く。思わず手で触る。これは……なかなか恐怖体験かもしれない。
鏡の前に行く。僕が映っている。2年前と何も変わらない、鏡面みたいな真っ黒い目がこちらを見つめている。
「まずは、うん。混乱させて申し訳ない」
「いやいいよ。それより僕っていつか消えるの?ほら、多重人格って」
「消えない。はあ……魔王のやつ、本当に余計なこと言いやがって……」
僕がしないような、本気で苛立ってる表情を鏡の中の僕は浮かべている。
「今しゃべっている僕は過去の人格。君はランダム性を引けるよう更新した未来の僕の人格。だからもし消えるなら僕の方だね。まあ現在の僕が存在しないから消えたりしないんだけど」
「は、はあ」
よく分かんない話をしてる。
……ただ、この僕が本当のことを言っているとも限らない。信用はしすぎないようにしよう。
「僕と僕が同時に存在できるのはひとえに僕がハイスペックだから……ってのは置いておこうか」
「うん」
「僕とは全く関係なく、観測しきれない場所で時間が巻き戻る事象が確認されている。今回でようやく終わりを迎えたけど今は4回目の世界線だ。君をインストールして本当に良かったと思ってるよ。僕の相棒。大好き超愛してる」
……本当に僕みたいだなこの別人格。愛の言葉が羽根より軽いのとか。
「君僕の顔好きなんだよね?キスしてあげようか」
「今この状態でやったらただの変態なのでは?」
自分で自分をキスしているだけなのでは?
「……そう言えば」
明らかにこの僕と僕の間に相違点があるにも関わらず、言及されてないことがある。
「この世界が乙女ゲームだってこと、僕は知ってるの?」




