アリサ・フェルベール。2
そんな時、どこからか笑い声が聞こえてくる。
「あははっ! あんな蹴りも避けられないなんて男のくせに情けないわね!」
その声の主の方を見ると、俺と同い年くらいの赤髪の女の子が笑っていた。その隣にはイケメンの騎士の甲冑を着た男性がこちらへ歩いて来る。
「これ! アリサ! 失礼だろう!」
「だって……お父様。あの子ったらあのくらいの攻撃も避けられないなんておかしくて……あうっ! いたーい!」
そう言って笑っていた女の子が急に頭を押えて涙目になる。
全く攻撃の仕草が分からなかった……赤髪のイケメン騎士は相当な手練れなのはそれを見ていれば明らかだ。
「ランベルク隊長! 娘が失礼しました!」
「いい、私の息子のリオンだ……リオン。今日からお前に剣術を教えてくれる私の一番弟子のグランツだ。挨拶しなさい」
「は、はい!」
俺は慌てて立ち上がると赤髪のイケメン騎士に頭を下げた。
「リオン・エイデルです! よろしくお願いします!」
「私はグランツ・フェルベールだ。こっちは娘の……ほら、アリサ。挨拶しなさい」
「うぅ……アリサ・フェルベールよ」
赤髪に深紅の瞳の見た目は可愛い女の子が不機嫌そうに渋々俺にぺこっと小さく頭を下げた。
「さっそくだが、アリサ。リオン君と手合わせしてみなさい」
「えー!! 嫌よお父様!! こんな弱いのと戦ったら怪我させちゃうわ!!」
「いいから、やってみなさい! リオン君、いいかな?」
「は、はあ……」
俺は頷いてアリサの方を向いた。
アリサは嫌そうに木剣をグランツから受け取ると、それを俺に向かって構える。
「……怪我しても恨まないでよね?」
「いくらなんでも、女の子に負ける事わけないよ」
「むっ…………いいわ。女だって馬鹿にするなら……殺してあげる」
不機嫌そうに俺を睨み付けるアリサは俯き加減にそう呟くと、殺気に満ちた深紅の瞳を俺に向ける。
アリサが深呼吸したかと思うと次の瞬間、アリサが地面を蹴って一気に距離を詰めてくる。
「死ねぇー!!」
「……うわっ!」
一瞬で懐に飛び込んできたアリサが殺気を剥き出しにして木剣を振り抜く。
俺はすぐに木剣でアリサの木剣を弾くと、アリサは飛び上がって空中で体を回転させると俺に向かって足を突き出してくる。
アリサの捕捉しなやかな足から繰り出された蹴りが俺の腹部を直撃して、俺を後方に吹き飛ばす。
「……くっ!」
「このぉー!!」
俺がバランスを崩したのを見て、すぐに地面を蹴ってアリサが木剣を突き出して俺に迫る。




