レイラの過去。4
食事を終えると、俺は再びエイネスにたずねた。
「……先生。伝説の竜殺しの英雄。リュウジのことを知っていますか?」
「リュウジ? ああ、もちろん知っているわよ。会ったことはないけどね!」
「少しだけ、聞かせてもらえませんか? レイラにも関係あることだと思うので!」
レイラが伝説の竜殺しの英雄、リュウジの従者だったとしたら、エイネスから聞く話が彼女の謎を解くヒントになるかもしれない。
エイネスは思い出すように顎の下に指を当てると、ゆっくりと語り始めた。
「確か、私の記憶だと数百年前くらいだと思うわ。ある街に行った時に聞いた話……リュウジには治癒魔法が使えたらしいわ。なんでも、その魔法は死者すらも蘇らせることができたって噂があったわね」
「先生。リュウジには連れはいませんでしたか? 女の子の……」
「ロリ……いや、女の子? そんな話があれば忘れないはずだけど……」
エイネスはそう言っていたが、それだと俺が見た夢はやはりただの夢だったのかもしれない。
確かにエイネスが子供好きだからこそ、リュウジの従者にレイラがいれば忘れないはずだ。
「……でも、リュウジはある時から回復魔法を封印したらしいわ。まあ、死者を蘇生もできる回復魔法なんて物騒過ぎるもの……封印して当然よね」
「何でですか?」
俺がエイネスに聞き返すと、彼女は再び話し始めた。
「リオンくんは回復魔法は血管や切断されたなどの重傷を負った時しか治せない。内傷や体力の回復にはポーションを使うのは知ってるわよね?」
「……はい。知ってます」
回復魔法とポーションを転生前の現実世界で説明すると、回復魔法は外科的な処置で、ポーションは内科的な処置ということになる。
「リュウジの回復魔法は通常でも回復魔法とポーションの両方の効果があったって言われていて、それだけでも破格の能力なのよ。そこに死者を蘇生できる魔法でしょ? 争いの火種にしかならないわね」
「亡くなった人を復活できるからですか?」
エイネスに質問すると、彼女は指を振ってチッチッと言った。
「……リオンくん、甘いわね。善人も悪人もその能力を欲しがるし、怖れるの。善人は愛する人を蘇らせるために……悪人は都合の悪い死者を蘇らせないために……だから、危険なのよ?」
俺はそれを聞いて納得した。
なるほど……愛する人を蘇らせるなら手段も方法も選ばない。また、悪事によって殺された者が蘇れば、死者すら悪事の証人として悪人を特定して裁ける。しかも、暗殺が無意味になるとすればそれを良く思わない者は、蘇生魔法を使える者を何としても殺すだろう……
俺はそう考えると、リュウジがその能力を封印したのは最善だったのかもしれない。




