アリサ・フェルベール
翌朝、俺が目を覚ますとまだ妹のリエラはすやすやと寝息を立てている。
俺は日課の剣の稽古の為に剣を持って屋敷の庭へと出た。
まだ、薄暗く太陽が昇る前の時間だが、鍛錬は大事だ。俺は現実の世界でも早朝のランニングを終えて自宅に隣接した道場で木刀を振っていた。
その日課が、こっちに来ても体に染みついている。庭をランニングして終えると瓶に入っている水を飲んで剣を鞘から抜いた。
僅かに顔を見せる太陽が剣の刃に反射して朝露で濡れた木々や草花をキラキラと輝かせている。
「はっ! とう! とう! やっ! はぁっ!!」
俺がいつものように剣を振っていると、そこに珍しく父親のランベルクが二本の木剣を持ってやってきた。
「朝から精が出るな! リオン!」
「……あっ、父上」
ランベルクが来た事で俺は剣を振る手を止めた。
「久しぶりに稽古を付けてやろう! ほら、受け取れ!」
「はい!」
微笑んだランベルクは手に持っていた木剣を俺の方に軽く放り投げる。
それを空中で受け取ると俺はランベルクと木剣を向かい合って立つ。
「さあ、リオン! どこからでも来い!」
「はい! やぁー!!」
俺は木剣を構えると地面を蹴ってランベルクに向かって飛び掛かった。
ランベルクは俺の木剣を軽く弾くと、すぐに斬り返してくる。俺の頬の横をすり抜ける木剣の刃を横目で見ると俺も素早く木剣を振り抜く。
何度かカンカンと互いの木剣が当たる音が響くと鍔迫り合いになって止まる。
「新兵よりも鋭い太刀筋だ。良く訓練しているなリオン……」
「はい! 僕には剣しかありませんから!」
「…………リオン。なら、手加減は無用だな! こちらも本気で行くぞ!」
「はい! 父上!」
俺はランベルクから距離を取ると、木剣を構えると深呼吸した。
日々の練習で会得したとっておきを出す為に集中して木剣を構えてぐっと地面を蹴った。
俺は残像を残し一瞬のうちにランベルクの懐に飛び込むと木剣を振った。
「はぁっー!!」
「……なにっ!?」
ランベルクは驚いたように目を見開いたがその直後、一瞬で殺意が混じった鋭い視線に変わると足で俺の脇腹を蹴った。
「うぐっ!」
俺は地面を激しく転がって止まった。
「しまった! リオン! すまない。大丈夫か!!」
我に返ったランベルクは慌てて俺の方へと駆け寄ってくる。
「ゴホッ! ゴホッ! は、はい……」
倒れていた俺は蹴られた脇腹を押えながらゆっくりと体を起こす。




