レイラの過去。2
ボス部屋の中にいたのは巨大なフェンリルだった。
その毛並みは白銀で体の周りには冷気を纏い、氷の細かい粒子がキラキラと宙を舞っていて神々しく美しい。
ワオオオオオオオオオオン!!
フェンリルが叫ぶと、鋭利な氷の柱が宙に浮かび上がった。
鋭く睨むフェンリルの青い瞳がリュウジとレイラを捉えた直後、鋭利な氷の柱が飛んでくる。
リュウジはレイラに向かってくる鋭利な氷の柱を金色の剣で全て叩き落す。
「お前の相手は俺だ! 来い!!」
リュウジが叫ぶとフェンリルの体から出ていた冷気が一層強まる。
「レイラ! サポートを頼む!」
「うん! 任せて!」
レイラは素直に頷くと、後ろに下がって杖を構えた。
「……いくぞ!!」
リュウジが金色の剣を構えて地面を強く蹴って駆け出す。
残像を作り出しながら、龍の体のように金色の生み出した残像の帯びがフェンリルの周りで渦を巻く。
フェンリルは氷の柱で迎撃するが、その全てをリュウジはいなして進む。
「うおおおおおおおおおっ!!」
雄叫びを上げながら飛んでくる氷の破片を体に受けながら間合いを詰めたリュウジはフェンリルの横腹を金色の剣で斬り裂いた。
腹を裂かれたフェンリルの傷口に氷の結晶が集まって流れ出す血が止まる。
「リュウジ! 精霊よ。彼の傷を癒しせ! パーフェクトヒーリング!!」
レイラはすぐにリュウジを回復魔法で治療する。
リュウジはレイラに軽く微笑むと、再びフェンリルに向かって突っ込んで行く。
何度も攻撃し傷つきながらも、遂に勝負がついた。
リュウジの金色の剣によって真っ二つに斬られたフェンリルは、その場で倒れて動かなくなった。
「終わったのか?」
「うん……もう死んでいるみたいだね」
フェンリルの遺体はゆっくりと白い光の粒子となって消滅していく。
リュウジは金色の剣を鞘に納めると、レイラの方へ向き直った。
レイラの目の前まで行くと、リュウジは立ち止まって静かに彼女を見下ろした。
「……リュウジ?」
彼女の元に戻ったリュウジは彼女を見ながら静かに告げた。
「……レイラ。お別れだ……」
「……えっ?」
リュウジの言葉にレイラは戸惑うばかりだった。
「ど、どうしてそんなこと言うの? ねぇ……リュウジ」
彼女は動揺しながらも必死に問いかける。
「分かってくれ。君を護るためなんだ……」
「お願いだから私を一人にしないで! 私は何もいらない! ただリュウジと一緒に居たいだけなのに!」
彼女の懇願するような涙で潤んだ瞳に、彼は俯いてしまった。
「……すまない」
小さな声で謝るリュウジはレイラの頭に手を乗せた。
すると、彼女は糸が切れたようにその場に倒れ込み、リュウジは彼女を優しく抱きかかえる。
「今までありがとう。愛しているよ……レイラ」
リュウジはレイラの体をボス部屋の奥にある部屋に連れて行くと床に寝かせて手を突き出す。
その直後、枷と鎖の付いた台がレイラの体を拘束する。
「……レイラ。本当はこんなことはしたくなかった……君を守れなかった僕を許してくれ……」
リュウジは眠ったように安らかな顔をしているレイラの頬を撫でて言った。
「きっと……迎えに来る。それまで……おやすみ……レイラ」
リュウジは持っていた金色の剣を地面に突き刺すと、ボス部屋の入り口に向かって手を突き出す。
すると、重い扉が閉まり。さっきフェンリルを倒したはずの場所に黒竜が出現する。
「この黒竜は僕にしか倒せない。これで誰も君を傷付けられない。また、会う日まで……レイラ。お別れだ……」
そう寂しそうな顔でレイラの頬にキスをしてリュウジは去って行った。
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