異世界転生。6
「それで、こんな遅い時間にどうしたんだ?」
「……ぐすっ。おにいさま、わたし……わたしのこと、きらいになった?」
「嫌いになるわけないだろう? どうしてそうなったんだ?」
「だ、だって……わたし、まりょく……ぐすっ、すごいって……みんなが、おにいさまとはちがうって……ぐすっ、ぐすっ、おにいさまのこと……いらないって……くに、からおいだすって……」
どうやら、誰かがリエラと俺を比べてそんな事を言っていたのだろう。
リエラはまだ子供だが、洞察力が高い。大人達が噂している事を気にしてしまったのだ。俺が貴族達から疎まれているのは分かっていた事だ。
貴族どころか庶民よりも魔力量がない俺を、まるで腫れ物を扱うように貴族達は扱っている。父親や母親にも色々と嫌がらせのような事を行っているのも知っている。
「リエラ。俺はどこにも行かない……ずっとリエラと一緒にいるよ」
「ぐすっ……ぐすっ……ほんとう?」
「ああ、本当だ。魔力がどんなにすごくても、リエラは俺の大切な妹だ……絶対に嫌ったりなんてしないよ……」
「うん。おにいさま……だいすき……」
それを聞いたリエラはにっこりと笑って俺に抱き付いてきた。
俺もリエラの小さな体を優しく抱きしめると、頭をゆっくりと撫でてリエラを落ち着かせる。
しばらくして、すっかりいつもの甘えん坊なリエラに戻って俺に抱き付いたまま頬をすりすりと擦りつけてくる。
「お兄さま! リエラ、お兄さまと魔法のお勉強がしたくて今日、家庭教師をお願いしたの! すごい先生を呼んでくれるって言ってたから、きっとお兄さまも魔法が使えるようになるよ! そしたらもうお兄さまをバカにする人達もいなくなるよね!」
「……ああ、ありがとう。リエラ……お前は本当にできた妹だ……大好きだよ」
「うん! リエラもお兄さまのことだいすき!」
リエラはそう言ってにっこりと笑う。
それから少し経って、リエラは俺のベッドでイルカの抱き枕を抱きしめながらすやすやと気持ち良さそうな寝息を立てる。
昨晩から教会に行って水晶で鑑定を受けるのを心配していてあまり眠れていなかったのに、わんわんと泣いた事で余計に疲れてしまったのだろう。
俺はベッドで眠っているリエラの頭を優しく撫でながら部屋の窓から煌めく夜空の星を見上げる。
「……僕も魔法を教えてもらえば使えるようになるのかな?」
俺は星空を見上げながら僅かばかりの希望を胸にその日は眠りに就いた。




