ダンジョンの最下層。4
ボス部屋にいたのは牛の頭に筋肉質の体に巨大な斧を手にしている。
この階層のボスはどうやらミノタウロスのようだ。
ヴォォォオオオオオオオオオオオオオオッ!!
雄叫びを上げたミノタウロスは巨大な斧を持った腕を横薙ぎに振った。
空気を切り裂く音と共に刃先の部分に衝撃波が放たれてそれがエイネスに当たることなく弾け飛んだ。
「すごいすごい! 牛肉の分際でいい技を使うわね! でも……」
エイネスは杖を構えると目を瞑って詠唱に入り始めた。
「炎よ。我が前の敵に裁きを与えよ。煉獄の炎で敵を屠れ! バーニングイグニッション!!」
詠唱をしている最中にミノタウロスがエイネスに放った衝撃波がエイネスの前で一瞬にして掻き消えた。
その直後、ミノタウロスの足元から立ち上がる炎の柱が、ミノタウロスのその巨体を飲み込んだ。
断末魔の叫びを上げ、全身がこんがりと焼けて力なく地面に倒れる。
「……う〜ん。牛肉の焼ける良い匂い! リオンくんとアリサちゃんを救出したらみんなで焼肉にしましょう! ロリとショタを肴に肉とワイン……はやくやりたいわねぇ〜!! 焼肉を頬張って幸せそうな笑顔を浮かべるロリとショタ……あぁ〜、たまらないわぁ〜」
エイネスが体をうねうねとくねらせながらニヤニヤと笑っていると、倒れていたミノタウロスがゆっくりと立ち上がる。
最後の力を振り絞り、ミノタウロスが咆哮を上げながらエイネスに向かっていく。
「危ない! エイネス先生!!」
「間に合いませんよ……もう……手遅れです」
リティスはため息を漏らすと、向かって来ていたミノタウロスが急に体が切り裂かれてバラバラになって床に肉片となって転がる。
エイネスは氷のように冷たい視線をミノタウロスだったものに向けていた。
「……私がなにも仕掛けもなくボス部屋なんかに足を踏み入れるわけないでしょ? 部屋中に闇魔法で生み出した糸を張り巡らせてあるわよ……まあ、肉片に言っても、分からないでしょうけどね」
エイネスは腐っても世界最強と呼ばれる魔導師だ。この程度の敵などに本来は相手をする資格すらない……いや、この世で彼女の相手を出来る者など存在しないのかもしれない。
「エイネス先生! やっぱり、あなたはすごい! 俺の先生はすごい! すごすぎます!」
「……ふふっ、ショタからの羨望の眼差し。ぐへへ……最高」
エルロンドに背を向けてだらしない顔でニヤついているエイネスを呆れた表情で見つめるリティス。
その後、ミノタウロスを倒したことで最深部への道に繋がる階段を下りていく3人。
その階段を降りた先は明らかに異質だった。
「師匠。この場所……嫌な予感がします」
「そうね。ここは明らかに……異質すぎる。それに……」
エイネスが振り返ると、降りてきた階段がただの壁へと変わる。
消えた上へ向かう階段の後を見つめ、エイネスとリティスは警戒心を最大まで引き上げていた。
「リオンくんとアリサちゃんがいる階層も同じ仕様だとすると……急がなければいけないようね」
この階層のボスはキマイラだったが、それもエイネスが一人で軽く蹴散らして更に下の階層へと急いだ。
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