ダンジョン。10
俺達はすぐに戦闘態勢に入る。
俺は剣を構えると、エルロンドとアリサは魔法の詠唱を開始する。
「大地よ。地を裂き荒れ狂う波となって敵を飲み込み賜え! アースグレイブ!!」
「炎よ。火球となりて我が前の敵をほふりたまえ! ファイアボール!!」
エルロンドとアリサが魔法を発動させると、地面が裂けて火球がホブゴブリン達に向かっていく。
ホブゴブリン達は向かってきた火球を剣で切り裂き両断する。
また、割れた地面の裂け目を見た目からは想像もできない身軽な跳躍を見せて飛び越え、そのまま止まることなく突進して来る。
「あたし達の魔法をかわした!?」
「なんて奴等だ! 普通のゴブリンとは比べ物にならない!!」
アリサもエルロンドも巨体が素早く魔法をかわすなど想像もしてなかったのだろう。
2人は目を丸くして驚いていた……
そんな2人の前に割り込んで剣を構えて残像を発生させながらホブゴブリンの中に突っ込んで行く。
「……ッ!! はぁぁああああああああああああっ!!」
剣を振り抜いてホブゴブリンを切り倒す。
断末魔の叫びを上げながらホブゴブリンが倒れた。
仲間が倒されたことで、ホブゴブリンの注意が俺に向いた。
「アリサ! エルロンド様! 僕が時間を稼ぎますから、早く詠唱を!!」
俺の声にハッとした2人はすぐに詠唱に入った。
「炎よ。灼熱の業火で我が前の敵を消し炭にせよ。地獄の番犬よ。炎と成りて顕現し、暴虐の限りを尽くし、全てを飲み込み焦土と化せ! 我、アリサ・フェルベールが命じる……ケルベロスボルケーノ!!」
アリサが詠唱を終えると、手を突き出した先の地面が溶けてマグマのようになり、そこから地獄の番犬ケルベロスの形をした炎が飛び出してホブゴブリン達に襲い掛かる。
「大地よ。大いなる息吹で地面を揺らし偉大さを示せ! 光よ。我が前に現れ賜え……神の裁き……神よ。その怒りのままに鉄槌を我を恐れぬ者に知らしめよ! 神の雷……ボルテックスライトニング!!」
エルロンドの詠唱中に地面が震え、光がバチバチと彼の周りに集まったかと思うと、稲妻が地面を走るようにホブゴブリンに向かって行く。
それを見たエイネスは感心した様子で言った。
「多重詠唱ね。しかも、難しい雷属性を土属性魔法と光属性魔法で生み出している……これが王族が代々受け継いできた。高位魔法……あの年齢で使えるなんてエルロンドくんは天才ね! まさに神童だわ!」
雷鳴が轟き周囲の静電気でエイネスの紫色の長い髪がふわっと浮き上がる。
エルロンドの放った稲妻の柱が地面を走りながらアリサの炎のケルベロスと俺の倒しきれなかったホブゴブリンを直撃し、一瞬で消し去った。




