異世界転生。5
まだ5歳のリエラには大き過ぎる玉座に座らされ少し困った表情をしているリエラ。
普段なら甘えん坊なリエラは俺の側を離れたがらないのだが、今日に限っては様子がおかしい。いや、今朝は普段と変わらなかったから正確には教会で水晶に鑑定されてからおかしいのだ。
だが、急に最強の魔法使いやら神様の御子などと担ぎ上げられれば困惑するのは当然か……
「ランベルク。お前の娘はまさに我が王国の宝だ! 我が国に神子を授けてくれたのを感謝するぞ!」
「はい。陛下……有り難き御言葉。このランベルク、素晴らしき娘を授かった事を神と妻に感謝しております」
父親はそう言って頭を下げながら言った。
俺の父親であるランベルク・エイデルは、国王の剣と呼ばれるほどの人物で、戦の際は先頭に立ち兵士達の指揮を取る武闘派だ。
俺に魔力が少なく魔法使いになれる適性がないと分かっても、廃嫡などもせずに面倒を見てくれている。貴族達から俺の事で悪い噂が出ても顔色一つ変えずに俺の事を息子として愛してくれていた。
「リエラ。必要な物、人があれば、なんでも言うのだぞ? 私がなんでも用意してやろう!」
「なら、王様。お願いがあります!」
リエラは国王に耳打ちするようにこっそりと何かを伝える。
「はっはっはっ! それくらいお安い御用だよ小さな聖女様。それでは、数日後に派遣しよう!」
「……はい。ありがとうございます」
国王の話を聞いてリエラはこの日、初めての笑顔を見せた。
それからは豪華な食事と盛大な舞踏会が行われて、リエラの誕生日と神の神子たる彼女の誕生を祝った。
王城で行われた盛大なリエラの誕生日会を終えたその夜、俺の寝室のドアをノックする音が響いた。
「はーい。開いてるのでどうぞー」
俺はドアに向かって言うが、ドアが開く事も声が返ってくる事も無い。
不思議に思った俺はドアの方へと歩いて行くと、扉をゆっくりと開けた。
「……リエラ?」
「…………」
ドアの外に立っていたのはピンク色のネグリジェに包まれ、無言のまま宝石のような碧眼の瞳に涙を溜めてイルカの抱き枕を持ったリエラだった。
「リエラ。どうしたんだ?」
「……おにいさまぁ」
胸に抱きしめていたイルカの抱き枕をぎゅっと握りしめながら、潤んだ瞳で俺を見上げている。
「……ごめんなさ~い! おにいさまごめんなさ~い!」
「ど、どうしたんだ? リエラ。いいから、部屋に入って」
「……うん」
俺は急に泣き出したリエラを部屋の中に招き入れると、ベッドに腰を下ろすように言った。




