魔法の師匠。9
俺達が屋敷の図書室に戻ると、窓から夕日が差し込むリティスの膝の上でリエラがすやすやと気持ち良さそうに寝息を立てていた。
「あら、おかえりなさい。リオンくんに何かしてないわよね?」
「……失礼ね。したいとはずっと思っているけど、私はムードを大事にするタイプなのよ!」
目を細めて疑惑の視線を向けるリティスにエイネスは頬を微かに膨らませながら不服そうに答えた。
「どうだったか……うちの幼い時の記憶を思い起こしてるけど、あんたからムードなんて言葉は思い出せないけど?」
「うっ……」
痛い所を突かれるという感じで冷や汗を流しながらエイネスはリティスから視線を逸らした。
リティスは大きなため息をつくと俺に向かって言葉を掛けてきた。
「なにかされたらうちに遠慮なく言ってね。その時はうちがこてんぱん……にはできないけど、社会的に殺すことはできるから!」
「うっ……あなたなら本当にやりかねないわね……」
「それだけ後ろめたいことをうちみたいな孤児にしてきたってことでしょ? 自業自得です!」
そう言われたエイネスは動揺しているのか全身から大量の汗が湧き出しながらリティスから視線を逸らす。
孤児という弱みに付け込んで好き勝手やっていたとすればもう擁護のしようもない。具体的な事例を被害者が挙げれば、エイネスは社会的に抹殺されるだろう。
「それで先生達はどうするんですか? 旅をしているなら屋敷はありませんよね? 宿に泊まるんですか?」
「ああ、それは国王様が王城の隅にある離れを貸してくれる事になっているの!」
リティスがそういうとエイネスも頷いている。
「でも、王城からうちの屋敷まで結構距離がありますよ? もうこの屋敷に住んだら良いんじゃないですか?」
「そう! そうなのよ! 私も最初そう言ったんだけどランベルクが……お前を家に置いたら家庭が崩壊する。絶対に却下だ……って!」
エイネスはランベルクの真似をしながらそう告げた。
「僕からお父様を説得してみますよ!」
自分の胸を叩いて自信満々にエイネス達に言った。
俺はランベルクの私室に、エイネス達の屋敷に置く許可を得るために行った。
「却下だ……」
やはり、ランベルクは予想通り反応で即答だった。
だが、約束したからにはここですぐに引き下がるわけにはいかない。
「でも、お父様。僕とリエラの魔法の授業をしてくれている先生を無下にするのはエイデル公爵家としてどうなんですか?」
「……ぐっ」
ランベルクは眉をひそめながら困った様子で俯く。




