異世界転生。3
だが、唯一の救いは六大属性全てが使える事だ。一般的に属性は2つから多くても3つ。俺は全ての属性に適性がある。まあ、適性だけあったところで魔力がなければ宝の持ち腐れだ。
「……僕。やっぱり魔力が少ないんだ」
俺は水晶の結果を見る前から自分の魔力が少ないのではないかという疑問がすでにあった。
魔法の本を読んで魔法を使えるか試してみた事があったのだが、本の通りにやっても魔法を発動できなかった。
そんな事もあり、俺は魔力がないか少ないのではないかと思っていた。それは俺が魔法のない世界からの転生者だからなのかもしれない。
顔色が青白くなっていた俺をその場にいた母親が抱きしめる。
「……リオン。大丈夫よ。魔力が少なくたってリオンは私の大事な息子だからね……」
「はい。母上……」
(本当に優しい子だ。魔力なんてなくたって、俺は必ずこの子を幸せにしてみせる)
俺は優しく抱きしめてくれている母親に誓った。
そこから俺は前世と同じく、武術や剣術などに殆どの時間を費やした。
それから月日が経ち。妹のリエラの5歳の誕生日。
俺は8歳になり、いつものように朝早くから剣を振っていた。
「お兄さまぁ〜」
「リエラ。今日は教会に行く日だろ? こんな所で油を売ってていいのか? 母上に怒られるぞ?」
「……うん。ねぇ、お兄さま。教会に行くの一緒に行ってくれないの?」
「ああ、僕は家にいるよ。リエラも知ってるだろ? 僕は魔力が少なくて教会からも良く思われていないんだ。メイド達とリエラのお誕生日会の用意をして待ってるから……」
俺は抱きついていたリエラにそう告げると、リエラは表情を曇らせながらゆっくりと俺から離れた。
「……うん。ごめんなさい。お兄さま……」
リエラの声は力がなく微かに震えていた。
俺がリエラの手に視線を下げると、彼女の小さな手がプルプルと震えている。
まあ、俺の時に魔力が少なく心無い貴族達からはエイデル公爵の長男は捨て子だった……なんて言われている。
リエラは大人の事をよく見ている賢い子だ。おそらく、自分も俺と同じように魔力が少なくエイデル公爵家は兄妹とも拾い子などと言われるのではないかという不安があるのは自然な事だ。
きっと昨日の夜は眠れなかったのだろう。リエラの目の下には微かにクマができていたし顔色も悪く見えた。
「……分かった。リエラ、僕も今日は一緒に行くよ」
「本当ですか! お兄さま大好き!」
リエラは満面の笑みで俺に抱きつき頬擦りしている。
そのリエラの姿を見ていると、俺が教会に付いて行くと言ったのが相当嬉しかったのだろう。
「ほら、リエラ。こんな所にいたら母上が心配するぞ? 早く戻って出掛ける準備をしてきな」
「うん! また後でねお兄さま!」
リエラは嬉しそうに屋敷の方に走っていくのを苦笑いを浮かべながら見送った。




