リオンの真の実力4
「少し休んだら、私と模擬戦だ。いいな!」
グランツはそんな俺達に向かって無慈悲に告げた。
「うえぇ〜」
「この後にすぐ模擬戦なんて……」
「グランツは……王子の俺を殺す気か……」
アリサ、俺、エルロンドが弱々しく言った。
「戦場なら死んでるぞ! 木剣でこの有り様なら、実際の剣はまともに振れない! 木剣を腕が千切れるまで振り続けても足りないくらいだ。私が子供の頃など、これ以上に厳しく扱かれたものです! まだまだ甘い!!」
完全に鬼教官と成り果てたグランツは鋭い目付きで、地面にドスッと木剣を突き立てて倒れている俺達の前に仁王立ちしている。
それから少し休憩し、やっと息が整い始めたのを見計らってグランツが叫ぶ。
「休憩終了! さあ、立って下さい!」
地面に突き刺した木剣から手を放してパンパンと手を叩くグランツ。
俺達は地面から生まれたての子鹿のように震える足と腰に力を入れてなんとか立ち上がった。
「さあ、全員で私に掛かって来なさい! 一太刀でも私の体に当てることができたら今日の稽古は終わりにして上げましょう!」
「……当たらなかったら?」
アリサが震えた声でグランツに訪ねる。
それを聞いたグランツは優しくにっこりと微笑み。
「良い質問ですねアリサ……勿論。終わりませんよ?」
「あのお父様の目……まじの時の目だ……終わった」
アリサは青白く生気のない顔で絶望したように俯いてそう呟く。
「大丈夫さ! 俺達は3人だ。連携して追い込めばいくらグランツと言えども一撃くらいは入れられるはずだ!」
エルロンドは木剣を構えて俺とアリサに檄を飛ばす。
確かにいくら大人と子供の戦いと言ったって相手は一人。こちらは三人だ。
囲んで一斉に攻撃を仕掛ければ、いくらグランツでも対応しきれるはずはない。
まずはエルロンドから余裕の表情で木剣すら構えていないグランツに襲い掛かる。
「はぁぁぁああああああああッ!!」
エルロンドの声の直後に鋭い突きが繰り出される。
その突きをグランツは体を軽く捻るだけで交わすと、交差するエルロンドに足を引っ掛けて転倒させた。
勢い余って地面を転がったエルロンドだが、体を回転させながら受け身を取るとすぐに立ち上がった。
「お見事ですエルロンド殿下。突きも重心がブレず、走る勢いを利用した良い突きでした。足元はお留守でしたが、すぐに立て直した身のこなしはさすがです」
「……世辞はやめろ、グランツ。攻撃が当たらなければ無意味だ」
エルロンドは余裕そうに微笑を浮かべるグランツを鋭く睨みながら木剣を構え直す。
「賛辞は受けておくものです……あまいぞ! アリサ!」
「くっ……きゃぁぁああああああっ!!」
エルロンドの方を向いていたグランツは視線を変えることなく背後から攻撃を仕掛けてきたアリサの木剣を受け止めた直後に、体を回転させてアリサの女の子特有の華奢な体躯を吹き飛ばす。




