リオンの真の実力2
エルロンドは後ろに跳んで崩した体勢を立て直して再び攻め込んでくる。
俺とエルロンドは木剣を重ね合わせてその場で鍔迫り合いをして膠着状態になる。俺とエルロンドは互いの顔を見合わせて不適な笑みを浮かべ合う。
「……エルロンド様。軽くって話じゃなかったんですか?」
「フッ……そうだね。最初はそのつもりだったが、君と剣を交わしていたら昨日負けたのが悔しくなってきてね……申し訳ないけど、俺の憂さ晴らしに付き合ってもらうよ! 君にはその責任がある!」
エルロンドはそう言って木剣を振り抜いて俺の体を一気に吹き飛ばす。
体勢を崩したのを立て直す暇もなく、エルロンドが木剣を前に突き出して俺に斬り掛かって来る。
体勢を崩していたタイミングを狙われた俺の体はいとも容易くバランスを崩して地面に手を突く。
次にエルロンドの方を向いた時には彼は、木剣を天に大きく掲げて勝ち誇った表情をしていた。
「……これで俺の勝ちかな?」
「いえ、僕はまだ諦めていませんよ? 木剣はまだ僕の手に握られていますから……勝機はまだある!」
「そうか……なら、君のその勝機とやらを……見せてもらおう!」
エルロンドは頭上に掲げていた木剣を地面に倒れている俺に向かって思い切り振り下ろす。
俺には魔法がある……英雄の使っていた身体強化魔法が!!
俺は地面に突いた手を軸に足に力を込めて地面を強く蹴って体を捻った。
エルロンドの木剣は地面に当たって虚しくカーン!っと音を周囲に響かせる。
「まさか、あの絶体絶命のタイミングから蘇るとは! ……なら、これならどうだ!!」
エルロンドは後ろに跳んで体勢を立て直そうとしている俺に向かって目を大きく見開くと左手を前に突き出す。
「炎よ。火球となりて我が前の敵をほふりたまえ! ファイアボール!!」
魔法の詠唱をするとエルロンドの手の平に赤い光が集まり、それが火球の姿になって俺に向かって放たれた。
俺はまだ空中だ。これは回避できない!
俺に向かって飛んでくる火球がゆっくりとスローモーションの様に俺の瞳に映る。
だが、俺は今は空中で身動きが取れない。完全に直撃コースだ!
……やられる!!
そう思って目を瞑った直後、俺の前を風が横切る。
「そこまで! そこまでです、エルロンド殿下!」
俺が瞼を開くと、そこには腰から剣を引き抜いて火球を切り裂いたグランツの姿があった。
「エルロンド殿下! まだ、リオンは魔法の勉強はしていません。その行動が本当にフェアだと思いますか?」
「……そうだね。これは俺が悪い……少し頭に血が上りすぎたようだ。リオン、すまない。この通りだ……」
エルロンドは持っていた木剣を地面に突き刺して、手足を揃えて丁寧に頭を下げて謝罪した。




