リオンの真の実力
翌朝。俺はベッドの上に眠っていた。
どうやら、昨日はそのまま寝てしまったらしい。目を擦りながら窓から差し込む外を見ていると小鳥のチュンチュンとさえずる声が聞こえてくる。
その時、ドアがガチャッと開いてリエラが元気に飛び込んできた。
「おにいさま~」
部屋に入ってきたリエラは俺のベッドにそのまま飛び込む。
「おっ! リエラは朝から元気だね……」
「うん! お母様がお兄さまを起こして来なさいって……えっと、おうじさま? が来てるからって」
「えっ!? わ、分かった。すぐに行くよ!」
俺は自分の上に乗っているリエラを持ち上げると、ベッドから降ろして急いで服を着替えた。
リエラは不思議そうに指を咥えて小首を傾げる。
俺は服を着替えて革鎧を身に着けると、急いで部屋を飛び出した。リエラもその後を笑いながら走って追い掛けて来る。
廊下を走っていると、王子様のエルロンドと会った。
「おお、リオン。おはよう!」
「エルロンド様! おはようございます! でも、どうして僕の屋敷に!?」
そう尋ねると、エルロンドは着ている革鎧を指差して微笑んだ。
「勿論、君と剣の稽古をグランツに付けて貰う為だ。グランツは少し遅れるらしい」
「いえ、それは見たら分かりますけど……僕が言いたいのは何でエルロンド様が僕の屋敷に足を運んできたのかって事で……僕はてっきり他の場所でやるのかと思ってたので」
「ああ、それか……俺は一応は君のお目付役も兼ねている。お目付役が監視対象に向かえに来てもらっていては父上にも君にも示しが付かないだろ?」
「……はあ」
確かにその通りだ。俺は逃げる気はないが、お目付役の王子様が迎えに来てもらえるのを待って俺に逃げられれば廃嫡になってもおかしくはないだろう。
エルロンドは爽やかな微笑みを浮かべてはいるが、案外と油断できない人物なのかもしれない……
「リオン。どうだろう? せっかく、グランツよりも早く来たんだ。俺と君で最初に軽く稽古を始めてしまうっていうのは?」
「……えっ? 僕とエルロンド様で?」
彼の申し出に俺が驚きながらも言葉を返すと、彼は笑顔で答えた。
「ああ、ダメかな? 軽く体を動かしておいた方が怪我もしなくて良いと思うんだ」
「……うーん。分かりました。そういう事ならいいですよ」
俺はエルロンドの言葉に頷いて屋敷の庭に向かうと、エルロンドと向かい合って木剣を構えた。
「いいですよ。エルロンド様……どこからでも来て下さい!」
「……それじゃ、遠慮なく行かせてもらう!」
エルロンドは助走を付けるように軽く地面を蹴ると、そのまま一気に加速して俺に木剣を振り上げる。
彼の振り下ろした木剣を俺は木剣で受けると軽く弾き返す。




