アリサ・フェルベール。6
「君は魔力の数値が低い事で、体が原型を保てるギリギリの数値の強化魔法を使っている。他の魔力が高い人間が、これと同じ事をやれば身体は体内で爆発させる魔力の圧に耐えきれずに粉々に吹き飛んでしまうだろう……」
「なら、僕は魔法が使えないんじゃなくてもう使っていたって事ですか?」
「そうだ。魔法は目に見えるようにするだけがではない。ここ数千年の間……君と同じ身体強化魔法を使える者はいなかったというだけだ」
「なら、僕は魔法を使えていたって事ですか!」
俺は嬉しさのあまり、表情をパァーっと明るくさせた。
「早く、母上とリエラにも教えて上げないと!」
「待ちなさい!」
走り出そうとした俺の手を引いてグランツが止める。
ランベルクが俺の肩を掴んで真っ直ぐに俺の目を見て話し出す。
「いいか? リオン。お前の魔法は珍しい魔法でお前以外の誰も使えない……国王には伝えていたが、もしも本当に身体強化魔法の場合は口外禁止の命令を受けている。もしも、それを破ればお前は危険な存在として監禁されるか、最悪は死罪になるのだ……」
「……し・ざ・い……」
その言葉を聞いた直後、俺の顔から血の気がサーッと一気に引いた。
まあ、公爵家の子とはいえまだ8歳の子供が数千年一度の能力を持っていると知られれば拉致される危険もある。
他国に奪われる危険があるのであれば、殺した方が王国の為になるだろう。
数千万の王国の民と公爵家の子供……どちらを優先するかなど考えるまでもない。
「リオン、いいか? 絶対に口外してはダメだぞ……」
「は、はい!」
まあ、命を失うかもしれないと分かれば絶対に口外などするはずはない。俺も転生してから8年でまた死にたくはない。
「あと、その汚れた体を風呂に入って綺麗にして来なさい」
「はい。父上」
俺は風呂に入るために廊下を歩いていると母親の声が聞こえてきた。
「ほら、こっちの服の方が可愛いわ。でも、こっちの服も可愛いわねぇー。もう迷っちゃうわぁー」
部屋から聞こえる楽しそうな母親の声を聞く感じだと、アリサが着せ替え人形のように扱われているのだろう。
俺も妹のリエラが生まれる前は良く女物の服を着せられて遊ばれていたから分かる。アリサには申し訳ないが母親の着せ替え人形になってもらおう……
脱衣所に入ると服を脱いで浴室に入ると、体を洗って湯船に浸かる。
「ふぅ~、でもまさか身体強化魔法を使っていたとは思わなかったなぁ~」
俺は天井を見上げてため息を漏らす。




