アリサ・フェルベール。4
女の子相手に失禁するくらいまで追い込んだのは、ちょっとやり過ぎたと反省している。
「アリサは同年代の子に負けた事がなくてね。リオン君に負けたのが相当ショックだったのだろう。まあ、あの子にとってはこの負けが成長の機会になってくれればいいんだが……」
「そうなんですか。突然、泣き出したから驚きました」
「あれで結構ナイーブな子なんだ。今度あった時は友達になってあげてくれると嬉しい……」
グランツは微笑むと俺にそう言って頭を下げた。
「それで、リオン君。私とも手合わせ願えないかな? 勿論、アリサのように全力で攻撃したりはしない。むしろ、君の全力を見てみたい……こちらは攻撃はしない。君の全力を私に向けてきてほしい」
「分かりました。こっちが攻撃するだけって言うなら……」
俺が木剣をグランツに向けると、彼は不適な笑みを浮かべて木剣を構えた。
「さあ、どこからでも打ってくるといい! リオン君!!」
「行きます!」
俺は足に力を込めると地面を蹴って木剣を大きく振り上げる。
「はああああああああっ!!」
「……いい踏み込みだ。しかし、まだ甘い!!」
俺が振り落とした木剣にグランツの木剣が当たって木剣が手から抜けて空中に吹き飛ばされた。
「攻撃しないって言ったじゃないですか!」
「攻撃ではない。迎撃だよ? リオン君……私は攻撃はしないと言ったが、剣で受けないとは言ってはいない! アリサの剣を君も受けていたじゃないのか? それを弾き飛ばしたりもしていただろ? 私もリオン君と同じ事をしているだけだ。さあ、来なさい!!」
「……屁理屈を」
俺は地面に飛ばされた木剣を握り直すと、不適な笑みを浮かべているグランツに向かって再び斬り掛かった。
地面を蹴って残像が残るほどのスピードで、一気にグランツの懐に飛び込んで木剣を振り抜く。
「はああああああっ!!」
「その動き……読んでいたよ!」
グランツは俺の木剣に木剣をぶつけると、再び手から抜け落ちた木剣が後方に飛ばされて地面に突き刺さる。
飛ばされた木剣の方を向いていると、グランツが俺に向かって木剣を振り下ろしてきた。
俺はハッとしてすぐに地面を蹴って後方に跳び退けた。
「すまないね。当てる気がない攻撃は攻撃と言うと思うかい?」
「……いえ、分かりました」
グランツの不適な笑みに俺の怒りは最大限まで高まる。グランツは当てる気がないと言っていたが、俺の胸のボタンが一つ彼の木剣に当たって吹き飛ばされていた。




