自由を我が手に
俺は自由に生きることが夢だった。昔からある王国に代々一族で仕えていた俺は何かに縛られていることに飽き飽きしていた。
だから王国やめて自由な傭兵として生きることにした。父上と母上からは反対されたし、王様にはハッキリとやめると言ったら寂しそうにしていた。
だけど自由が欲しかった。何者にも縛られず、自分で決めて生きていく。そんな誰からも命令されない人生を生きたい。
そう思っていた時期が俺にもありました。結果はうまくいかなかった。というか世界がそれを許さなかった。
王国という後ろ盾がなくなったことで俺に恨みがある貴族やら、敵国やらが俺に刺客や、暗殺者やらを贈ってきた。
最初は田舎に家を買って住んでいた。そしたら刺客に家を燃やされた。当然刺客達は返り討ちにして、雇い主に返品した。ついでに雇い主もあの世に返品した。
家を買っても燃やされるし、村の人達に迷惑になると思った俺は旅をして安寧の地を探すことにした。
だから村や町を転々としながら宿に泊まる生活を始めた。しかし今度は暗殺者が夜中に襲ってきた。
毎回夜中にくるから寝不足で朝は起きられなくなった。毒を盛ってきたこともあったが匂いや、味でわかったため普通に口に入れなかった。
それがわかると夜中に暗殺者が襲ってくる。当然返り討ちにして、町を後にする。
道中には獣やモンスターなどが出るが、それはそれで楽しかった。獣を倒して食べるのも美味いし、モンスターは金になるし防具や武器の素材になるから旅の軍資金になる。
何より野宿している時は刺客や暗殺者が襲ってこない。自由を満喫していると心の底から思うことができたからだ。
そんな日々を過ごして一年が経とうとしていた。俺はいつもの調子で宿に泊まるために名前を宿の店主に話している時だった。
「お兄さん今夜泊まるのなら名前を書いておくれよ」
店主に名前を聞かれ宿泊名簿に名前を書き込んでいる最中、後ろから殺気を感じた。
(あぁーまたか。しばらく来ないからうまく巻けてると思ったのになぁ〜今回は三人か面倒だな)
そんなことを思っていると店主が俺の名前を見て感心していた。
「ほぉ〜あんたザインガル・スルクイラと言うのか。東のグランド王国の騎士団長と同じ名前じゃのぉ」
「・・・・・・あはは。よく言われます」
「よく見たら、あんた筋肉もすごいし剣も使い古しておるしな。もしかしてあんたがそうだったりしてのぉ」
「あはは、まさかぁ〜」
紛れもない本人です。でもここで言ったら居場所がバレて何を送り込まれるかわからないし、黙っておくことにした。
そして時間は流れ月が昇り夜になった。宿屋で襲撃されるのが面倒だった俺は村の近くの森へと向かった。
森はまるで仕込まれたかのように静寂に包み込まれていた。獣の鳴き声や虫の声すら聴こえない。
「おい!!出てこいよ。やりやすいように人払いしてやったんだからよ!!」
言葉を聴くと草陰からゾロゾロと三人の男が出てきた。手に剣を持った明らかにゴロつきのおっさんといった感じだった。
「銀髪に、耳の傷・・・・・・お前がザインガルで間違えないか」
「あぁそうだ。どこのどいつの差金だこの野郎!!」
「フフッ、キルネイドの貴族からだ。あんたを殺せばたっぷり報酬がもらえるって言われてるぜ」
「あぁ〜あそこか。あいつら奴隷集めてたから王の命令で叩き潰したんだっけ。懐かしいな〜ルインと一緒にオークション会場壊滅させたっけなぁ〜」
「思い出に浸ってるんじゃねえぞ!!」
ゴロつきの一人が剣を抜き襲ってきた。俺は剣をひらりと躱わすと剣を抜き男の首を切り裂いた。
首から血を吹き出して倒れる男を見て、残り二人のゴロつきは怯えていた。
「何怯えてるんだよ?お前らから吹っ掛けたんだぜ。今更やめるなんて言わないよな」
「「う、うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」
向かってきた男達を剣で斬り伏せ返り討ちにした。毎回こんな風に敵を倒すとなんとなくだが物思いにふけてしまう。
(俺はいつまでこんな生活を続けるのだろうか。本当の自由などないのではないか、永遠にこんな生活を続けるならいっそのこと騎士に戻るかもしくは・・・)
そんなことを考えている最中だった。首元に何か冷たい感覚が襲うと同時にカチャという音が響いた。
首を触ってみると鉄の首輪のような物がつけられていた。俺は剣を振り抜きながら後ろを振り向いた。
首輪をつけた奴の首を斬り落とすつもりで剣を振るったが、その手は途中で止まった。止まった理由は首輪をつけた相手が十代半ばの少女だったからだ。
しかも少女の纏う服はボロボロで布のようなものだった。首元には俺と同じ鉄の首輪と、手首には手枷のようなものが付いていた。長い黒髪は整っておらず伸び放題だった。ルビーのように赤い眼は輝きを失い死んだ魚のような目をしていた。
「君は彼らの奴隷だったのかな?」
「・・・・・・はいそうです」
死んだ目で淡々と言葉を返す少女に俺はポリポリと頭を掻いた。
「あのさぁ。主人のおじさん達も死んじゃったし君も自由になったわけじゃない。この首輪外してどこかに逃げた方がいいと思うなぁ〜」
「それはできません・・・・・・」
キッパリという少女は言いきった。この子は奴隷だし行く場所がないのだろう。俺と同じで。
「そうだよね。奴隷だものね。親も故郷ももうないよね・・・・・・」
「いいえ違います。そういう意味ではありません」
「え?」
俺の疑問の答えを少女は輝きを失ったルビーのような赤い瞳で真っ直ぐ俺を見つめて答えた。
「貴方につけた首輪は拘束の魔装具です。死ぬまで外れませんし、どちらかがダメージを負うとダメージお互いに共有されます」
「なんてもん付けてんだ!!こんな物束縛系ヤンデレか、変態野郎しか使わないぞこんなの!!!!」
俺は首輪を引きちぎろうと力を込めるが首輪は全くちぎれず、形すらかわらなかった。
「ちなみに私と五十メートル以上離れると自動的に首が跳ね飛ばされます」
「おいもう嫌がらせとかそういうレベルじゃないじゃん!!ただの手の込んだ処刑道具じゃんこれ!!俺一生この呪いの装備つけてなきゃいけないの!!」
首輪に力を込めたり、剣で切ろうとしてみたが首輪は全く形を変えなかった。そして取れないことがわかると潔く諦めることにした。
「なぁ・・・君が捨て駒だと言うことはわかったよ。この首輪の素材知ってるなら教えてくれる?」
魔装具は魔物の素材を加工して作る道具であるため、素材さえわかればこの首輪を外す鍵を鍛冶屋に作ってもらえるかもしれない。
「硬龍ガンドランドと束縛の蛇姫ラミアメイルと言っていました」
「あーやっかいな素材で作ってくれたな」
硬龍ガンドランドは北の山岳地帯にいるドラゴン。岩のように硬い鱗は生半可な攻撃を通さない。
束縛の蛇姫ラミアメイルは南の洞窟に生息するラミアの女王。相手を魅了し精神を縛り、餌や苗床にするという。
「どっちもここからだと遠いな。とりあえず一緒にいるしかないか。君名前は?」
「奴隷番号110564号」
「違うよ。奴隷になる前の名前があるでしょ?」
「・・・・・・奴隷になる前の名前は捨てました」
余程思い出しなくないのか顔を下にして俯く少女を見て、俺は少し考え口に考えたことを出した。
「じゃあリーフで。お互い自由を得るために協力しよう」
「わかりました。ご主人様」
「ご主人様じゃないって」
そんな会話をしながら俺達は宿に戻るのであった。刺客を退け旅の仲間が一人増えた。
しかし、お互い自由を掴むためには途方もなく遠い道のりであることをまだ俺達はは知らなかった。




