天秤
今、私の目の前には、小道具屋で買った一つの天秤がある。
なんでも曰く付きらしく、向かって右の天秤皿にものを置くと、左側にはそれの価値と等しい金が現れるという。
そのとき、金を取ると右のものは消えて、二度と戻ってくることはない。
この天秤がどうやって価値を判断しているかということについては、一切が謎だ。
だが、それがどんなものであれ、必ず価値があるということらしい。
現に、私がテストで置いたかなり小さくなってしまった消しゴムも、ミリグラムもないような砂金としてでてきた。
もっとも、風でどこかに飛んで行ってしまって、そのまま消しゴムも消えてしまったが。
一度は試してみたいものだが、まだ生物での実験をしたことはない。
その生き物に価値があるのかどうか。
それを判断することは、倫理的にどうか、と思ってしまって二の足を踏んでいるからだ。
ただし、それは今じゃないというだけのこと。
いつの日にかきっと私はしてしまうことだろう。
残念ながら、金の魅力は倫理を超越したところにあるのだから。