おまけ SS/シークレット・サービス
その後① どんな夢
雪「…………」
袈裟丸「…………」
雪「…………」
雪、雑誌のページをめくる。二人の部屋に紙の音が響く。
袈裟丸、寝息の音。
雪「…………」
雪(袈裟丸のやつ、よく寝てるな)
雪(前も寝落ちしてたよな……、僕のベッドで。匂いが落ち着くとかなんとか言って。そろそろ兄離れさせるべきか?)
袈「…………すぅ」
雪「…………」
雪「ま……。もう少しこのままでも、いいか」
袈「……ふふ、もう食べられないです、お兄ちゃん」
雪「ふ、幸せそうにお決まりの寝言言いやがって。どんな夢を見てるんだか」
袈「えへへ。……おいしいよぉ、お兄ちゃんが」
雪(『が』???)
その後② 御黒と喪苅
南極のアジト。湯上りの喪苅がキッチンの御黒を発見する。
喪苅「にゃは、こんなところにいた。闇彦君、こんな所で一体……?」
御黒「見りゃ分かんだろ。食事だ」
掌大のカラフルな立方体が並んでいる。すべてペーストの塊。
喪「いや、見ても分からんて……。たまにはちゃんとしたご飯食べたら? 喪苅ちゃんが腕によりをかけて作っちゃるけん」
黒「不要だ。エデンのせいで、どうせ味も分からん。それなら効率的に補給した方が時間の短縮になるし、食うのも楽だ」
喪(御黒くん、苦味以外の味覚が失われてるから……)
喪「じゃ、じゃあせめてスープとかにするから。一緒に食べた方がおいしいよ」
黒「……」
黒(そういえば、実験のためとはいえ、俺が寝ている間の五年間、こいつは広い基地に一人きりだったんだよな)
黒(寂しい思いもしてるか……)
黒「分かった。明日は一緒に食事を摂ろう」
喪「む……、なんだかかえって気を使われた感じがする。子供を見る目付きだったにゃ」
黒「子供だろ、8つも下なら」
喪「にゃっ、失礼な。御黒くんが氷漬けになってる五年の間に、喪苅ちゃんだって大人のレディに成長してるんだよ! 実質3歳しか違わないし! もうお酒だって飲めるもん!」
黒「そういえば、たしかにお前……」
御黒、湯上りに上気した喪苅を眺める。
喪(おっ……? この朴念仁も、さすがに少しは意識したか?)
黒「頼もしくなったな」
喪「にゃ……」
喪(……方向性は違ったけど、これはこれで……)
黒「あと少し老けた」
喪「おいっ!!」
喪苅は御黒が丁重に詫びを入れるまで、口を聞いてくれなかった。
過日① ななまがり
昼下がりの基地にて。
ウルフギャング「お、侍のおっさんじゃん。何してんの?」
捌光「10号……。これは、素振り……。刀の……鍛錬……」
ウ「鞘付けたまま?」
捌「然り。刀は武士の魂。軽々に抜くこと能わず」
ウ「ほーん。で、その鞘のまま叩いてる布は?」
捌「これは布団……。干してる……。天気がいいから……」
ウ(天気がいいから……)
捌「何気ない日々の些事すら……心持一つで、修行に変わる……」
軽快に布団を叩く音。
ウ「へ、へえ……。立派だね、幹部自ら家事の手伝いなんて」
ウ(叩いてる……。『武士の魂』で)
捌「うむ。このために真新しい布団を買って来させ……、洗濯もさせた。やはり新しい布団に限る……」
ウ(増やしてる……、部下の仕事を)
捌「刀の可能性は……、無限大……。甘味を添え……、チョコに浸しても……美味」
ウ(フォンデュしてる……、『魂』で)
捌「……おっと、いかん……。修行というのに……、左手から……、外し忘れていた。……指輪を」
ウ(この男、結婚している……‼)
過日② 俺と同じ苗字になってくれ的な
雪(今日から四国任務か……。潜入捜査のためとはいえ、兄妹のふりして同居とはな……)
染「…………」
雪(副局長の指示で一緒に来たは良いけど……、この子完全な素人だよな? 何考えてるか分かんないし……。大丈夫だろうか。演技とか生活とか……)
雪「……404室……、ここだな。今日から僕らの住む家だ。まあ兄妹って言っても設定だから……、昼間は自由にしてくれて良い。ご近所に怪しまれない程度に……」
染「……。表札……」
雪「ん? ……ああ、それな。兄妹なら、同じ苗字じゃないと不自然かと思って……、合わせさせてもらった」
表札『染』
雪「偽名も必要だったしな。しばらくは染雪ってことで……。……染? なんで無言で悶えてるの……?」




