第4章
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校舎の壁に掛かっている時計を見て、沙羅は明冬と蒼浬に「また明日ね」と言って教室を出た。下駄箱から靴を取り出し、学校を出る。学校を出て空を見上げると、もう夕陽が沈みかかっていた。
私の頬を撫でるように風が通り抜ける。
時刻は午後、7時。遅くまで喋っていた所為か、辺りは薄暗く、電灯がポツポツと点きはじめていた。
「ちょっと、喋りすぎたかな…」
暗くなっていく空を見る。
手紙が来てからというもの私は挙動不審になりつつあった。誰か付けているんじゃないかとか、マイナス思考にどうしてもなってしまう。しかし、7時を過ぎても、私が通っている学校の生徒が疎らに歩いていた。ほっとする。安堵しながら、前を向くとぶつかった。相手の背中に顔をぶつけ、奇妙な声を出してしまう。
「い…っ痛…」
鼻を摩り、ぶつかった相手を見る。
「あ、悪ぃ。大丈夫か?」
顔を覗き込んでいくる目の前の男に、おもわず後を退く。久遠樹だ。人気者がどうしてこんな所に。
「う、うん! だ、大丈夫っ…」
端正な樹の顔に赤くなる。
「そうか、ごめんな」
「いいよ。別にどうってことないし」
手を左右に振り言う。
「あ、アンタ…水無月沙羅だろ?」
突然言われた事に対し驚いた。
「へ? そうだけど……。なんで私の名前知ってるの?」
問い掛けた質問はスルーされ、久遠樹は私を突き刺すような視線を向けてきた。
「アンタ、用心したほうが良いよ……その匂い、危険だ」
匂い? 私は袖に鼻を近づけ匂いの嗅ぐ。甘い香りも、彼がいう危険な匂いもまったく感じられない。
「? 私なにもつけてないけど…」
私がそう言えば、久遠樹はしまったという顔を見せ口を閉じた。
「っ…とにかく、気をつけた方が良い。じゃあ、な」
そう行って彼は私からさっさと逃げるように去って行った。
「…なんなの?」
掴まれた手が何故か、熱かった。久遠樹が急に現れた所為。きっとそうだ。私は自分に言い聞かせるように心の中でそれを繰り返し呟いた。