第18章
小鳥のさえずりと共に沙羅は目を覚ました。
カーテンから微かにもれる一筋の光。顔に当たる光に沙羅は目を細め、まだ覚醒しない頭をはっきりさせる。
むくりと起き上がり、ベッドを出る。
机の上に置かれている時計を見た。今は、午前7:00時。学校へ行くまでたっぷり時間がある。ゆっくりとした動作で沙羅はパジャマから制服へと着替え、部屋の隅にある鏡の前に立ってリボンを正す。そして、クシを片手に髪を梳かす。そして歯磨きをする為、階段を降りていく。洗面所に向かう時、台所から朝食の良い匂いがし、沙羅の鼻をくすぐった。数分で歯磨きを終え、リビングに向かう。ドアを開けると、バターの匂いがする。その香りに沙羅は笑みを漏らす。一日の始まりだと沙羅は確信した。
学校に着き、沙羅はまだ返していないハンカチを返すため樹を探しに校内を歩いていた。
「こんな、朝から居るわけ無いよね…」
ポケットの中に在るハンカチをスカートの上からぎゅっと握る。掌に柔らかい布の感触が感じた。
沙羅が歩き回って30分が経った。いくつもの部屋や室内を探しても樹の姿は見えない。
――あと、行っていないのは…屋上だけ。不安と期待を胸に沙羅は屋上の階段を一段ずつ登っていく。沙羅は階段を登り終え、やっと屋上の扉の前に立った。自分が上がってきた階段を上から見下ろす。此処まで来るのに、長く時間が掛かったと沙羅は思った。―――実際、そんなに時間は掛かっていないのだが。そして、恐る恐る――ドアノブに手を掛けた。
ガチャリと音を立てドアは開く。外の空気、風が沙羅の頬を撫でた。心地よい、風。沙羅は一歩、屋上に足を踏み入れた。そこにはよく見知った人物――樹が、沙羅に顔を背向け、フェンスに寄りかかっていた。
そよそよと髪が揺れている。樹は何を見つめているのか。憂いに満ちた彼の横顔に沙羅はドキリとした。そして、樹が沙羅の方を向いた。ぼんやりとした樹の瞳。それは沙羅を見て次第にはっきりし、樹は驚いた表情になった。
こうやって樹を目の前にすると何を言えば良いのか分からなくなる。彼の瞳に囚われてしまったように…。
ボーっと樹に見惚れていた沙羅。樹が口を開き、ようやく沙羅は気が付いた。
「…なんで、此処に?」
答えない沙羅に樹は間をいれず、言う。
「俺に、関わるなと言った筈だ―――」
何も言わない沙羅に樹は眉を潜める。その鋭い目つきに沙羅は怯え、震えた声で告げる。
「……私、ハンカチ返しに来ただけ、だからっ…!」
スカートのポケットから黒いハンカチを出し、樹に渡す。
「…それ、だけ…だからっ……それと、あの時っ…は……ありがとうっ…」
震えた声で怯えた表情で沙羅は言い、樹を不愉快にさせないよう、早く屋上から出ようとドアノブに手を掛けようとした、その瞬間。樹が沙羅の腕を掴み、それを制した。