表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/28

第16章

「はぁっ……はぁっ……」

沙羅は保健室を飛び出して直ぐ、樹の教室に向かった。教室のドアを開け中に入る。そこには誰もいなかった。もう授業が終わったのだろう。でも、久遠は何処に居るの? まさかもう帰ってしまったの?

そんなはず無い! 何故か沙羅は確信が合った。

 校内、玄関、廊下、渡り廊下、他の学年の教室、図書館、体育館など一通り行って見たが、久遠は居なかった。私は仕方なく鞄を持って学校を出た。家に帰ると見慣れない靴があり、不思議に思ってリビングに向かうと、明冬が椅子に座っていた。明冬は沙羅に気付き手を上げる。

「おっ! お帰り、沙羅。大丈夫か? 体調……」

「えっ……うん。もう大丈夫」

沙羅はそう言って無理やり微笑んだ。その不自然な沙羅の笑みに明冬は眉をひそめた。

「体調? どうかしたの? 沙羅?」

不安げに詩織が言う。

「大丈夫、大丈夫! 元気だよっ」

なんでもないといった顔で沙羅は詩織に言葉をかける。

「―――そう。それなら良いんだけど……また何かあったら、絶対、私達に言うのよ?」

「そうだぞ。沙羅」

ソファに座っていた父、茂瑠も頷く。そんな二人に弾圧されながらも沙羅は言った。

「う、うん……わかった。――さっきから気になっていたんだけど、なんで明冬がうちにいるの?」

沙羅の問いかけに詩織は思い出したように答える。

「あぁ…それはね。明冬くんのお母さんがケーキを焼いたから、どうぞって…おすそ分けって持ってきてくれたのよ」

「そっか。明冬のお母さん、お菓子作り上手だもんね」

納得したように沙羅がいうと沙羅達の横でテレビゲームをしていた柚鶴は声を出してはしゃぐ。

「じゃあ、切りましょうか。皆も揃っている事だし……! 明冬くんも食べてくでしょ?」

詩織は明冬が首を縦に振るのを見てケーキようの皿を取り出した。



「なんか、この頃沙羅、元気ないよなー」

玄関で靴を履きながら明冬は沙羅に言う。不意をつかれ、沙羅は素っ頓狂な声を出す。

「へっ?」

「だから……お前らしくねぇっていってんの!」

照れたように頭を掻きながら、明冬は言った。

「…や、やだな~! 私、そんな顔してないよっ…! いつも通りだってば!」

沙羅はそう言った途端、明冬の目が真剣になった。いつもとは違う明冬に沙羅は一瞬たじろぐ。

「…いつも通りなんかじゃねぇよ」

 明冬は沙羅の腕を掴みに自分の方に抱き寄せた。沙羅は体制を崩し、明冬の方に体が傾いた。明冬はそれを支えるように、優しく沙羅を包み込む。

「―――っ!?」

「――無理なんか、すんなよ……」

沙羅は驚いたように明冬を見上げる。どうして、自分の押し隠している気持ちが分かったのか……。バレていないと思っていたのに。どうして。

 沙羅は明冬の思っている事を読み取ろうと、もう一度、明冬を見上げた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ