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第1章

加筆修正が所々入っているので読みにくいかと思います。


 ご了承下さい。

 真紅にもちかい、赤色の薔薇。それは甘く香り立つ誘惑の華。誰もがその華に魅了される。心を薔薇に魅せられ、動くことも出来なくなる。

 指一本、触れさせない。まるで自分を守るかのようにとげがある。その棘があったとしても美しく香りを放つ。けれど、どこか儚い華。

 その華の別名は『吸血鬼ヴァンパイアの華』

 吸血鬼ヴァンパイアが最も好み、喉から手が出るほど欲しがる花、人間の少女。それは媚薬と言っても変わりは無い。そしてその存在は、彼らを一層引き立て、狂い惑わす。美しく危険な薔薇姫。

 二千年に一度―――生まれてくるか、こないか。そして、彼らが待ち焦がれてやっと、その薔薇姫は生まれた。可愛らしい産声うぶごえを上げ、生まれてきた。薔薇の血と香りを持った赤子。それを持ったものは抗えぬ運命を抱え、何も知らされず大切に、愛され育った―――。



 誰も居ない教室に一人の少女が窓の外を眺めていた。

 透き通るような真っ白い肌。ふっくらとした桃色の唇。艶やかな長い髪…。何処へ言ってもごく自然に目を引く容姿。

 少女は教室に掛かっている時計を見る。時計はちょうど、午後6時を指している。少女は机の横に掛けられていたカバンを持ち、教室を出た。

 人一人いない廊下。響く足音は先程、教室を出た少女のもの。昼は笑い声、教師の怒鳴り声が飛ぶ学びやだが、夕方になるとそれは乏しく聞こえてはこない。しかし、少女は慣れているのか、恐がる素振りもみせず、歩いて行く。

 この少女の名前は水無月沙羅みなづきさら

 玄関を降り、私は靴を履き替えようと手を伸ばした。そのとき、男女の争っている声が聞こえてきた。私は驚き、手を引っ込める。そして声のする方へ、そろりそろりと足を運ぶ。

「どうして…? なんでっ…?」

グスグスと鼻を啜る音が聞こえる。どうやら、女の子が泣いているようだ。覗いてみると、女の子が両手で顔を覆い泣いている。遠くからでも分かる泣きはらした目。

 嫌な場面に遭遇したものだと、私は心の内で悪態を付く。

「どうしてっ! あたしの何が悪いの」

 別れ話か。早く終わらないかな…私、早く帰りたいんだけど。

「別に? 理由は無いよ? ただ、君に飽きただけ」

その言葉を聞いて、おもわず上げそうになった声を飲み込む。よく、そんな事面と面向かって言える。平気でそんな事言えるなんて…。まぁ、私も人の事いえないけど。

 私がため息を出すのと同時に女の子の悲痛な声が響いた。

「あたしはっ……こんなに貴方の事がっ…好きなのにっ!」

「――はぁ。結局、それかあ。だから飽きるんだよね……女の子って。君は違うと思ってなのになあ、他の子達と…。がっかりだよ。もう目障りだから消えて良いよ? ああ、それから、もう俺の前に現れないでね?」

男は詫びる様子もなく淡々と女の子に告げる。

 私はその雰囲気に耐えられず、玄関を去ろうとしたのだが…。

 ♪♪~~♪ ♪~…と携帯のメロディーが鳴った。

「――誰?」

男は私の携帯の音に反応し、声を掛ける。そして、男は私の方へと近づきて来た。

 こっちに来る! どうしよう…! わたわたしていると玄関の隅に私が隠れられるほどの場所があり、そこに身を隠す。

「此処に誰か、いたんだと思ったんだけど……気のせいか」

男は不思議そうに言いながら、私のいた場所をまじまじと見つめ、気が済んだのか背を向け歩き出した。少しずつ、足音が遠ざかって行く。

 男が行ってしまったのを確認し私は全力で玄関を出た。その姿をあの男に見られているとも知らずに。

 沙羅の長い髪が夕日に染まり、橙色に輝いている。その、後姿うしろすがたを見て男は言った。

「……ついに見つけた、薔薇姫」

口角を上げ、男は不敵に微笑んでいた。

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