食事と『カード』と『敗北』と
それはほのかの一言で始まった。
「鍋やるべ!」
談話スペースにてトランプの途中、ハートの9を出すと同時に大声で言ったほのかをその場にいた全員―俺、志村さん、蜜柑、柿谷先生―が一斉に見た。
「いや、どうやって?」
それにツッコミながら俺はハートの10を出す。
「申請をしとけば何ら問題はないはずだよ」
そう言いながら先生はノータイムでクローバーの5を出した。
「でも材料はどうするんですか?」
蜜柑がスペードの2を出しながら首を傾げる。
「前は職員で何とかしてくれたぜ」
妙なところだけ覚えてる志村さんがスペードのKを出すべき場所にジョーカーを出した。
…スペードのK、俺じゃねぇか。
「と言う訳で柿谷先生、御願いします」
ハートのJを出しながら頼むほのか。
「人任せかよ」
しょうがなくジョーカーを回収する。志村さんがニヤニヤしてたが無視する。
「分かった、でもボクも参加するからね」
先生はやはりノータイムでダイヤのAを出し、列を完成させた。
「私、鍋って初めてなんですよ」
蜜柑は嬉しそうな表情でハートのQを出す。
「しかしまたなんで夏場に鍋なんだ?」
当然の疑問を問いかけながら志村さんはクローバーの10を出す。
「食べたいから」
さも当然だと言いたげな顔をしながらクローバーの4を出すほのか。
「…まぁいいけど」
クローバーのJ出しながら呟くが…鍋か。前の俺はどうか知らないが別段悪い話じゃないよな。
「何鍋にするつもりなのかな、ハイ上がり」
クローバーのQを出して一番最初に抜けた先生が尋ねる。
「私はボタン鍋がいいです、上がりました」
次いで蜜柑が自身の希望を言いながらスペードのAを出して列を完成させてゲームを抜ける。
「ボタン鍋って何?」
「猪の肉を使った鍋だな」
俺の質問に答えながら志村さんはクローバーの3を出す。
「残念だけど今回ばかりは蜜柑の意見も聞けないよ」
芝居がかった口調でハートの4を出す。
「珍しいな…『蜜柑第一主義』を名乗るお前が譲れないなんて」
出せる札が二つとも手元にあるためジョーカーを出すことが出来ないので仕方なくハートの3を出しておく。
「そんなに食べたいモノがあるのか?そして上がりだ」
ハートの2を出してゲームを抜ける志村さん。
「ねぇ…」
ほのかがにやつきながら話しかけてくる。
「アンタの負けよ」
「…」
その通りだ。俺の手札はジョーカーとクローバーの2。対するほのかは場に出ていない、そして俺が持ってないカードだからクローバーのAとハートのAだ。
「言うことがあるでしょ?」
皆も楽しそうに俺を見て期待してやがる。
「いや…ちゃんと最後まで」
「言いなさい」
「でも…」
「右フック」
「…まいりました」
俺って弱いなぁ…。




