最終話 ある意味恐怖かも知れない。
最終話 ある意味恐怖かも知れない。
留半樹已は、何事も無く月末を迎えた。そして、ふと、ラジオへ視線を向けた。その瞬間、茶柱の言葉が、思い返されるなり、「今日だったな。あの胡散臭い奴が、言っていたのは…」と、呟いた。今日が、その日だからだ。その途端、「今日で、夏休みも同じだったな…」と、感慨深げに、口にした。自分も、最終日の恒例行事の宿題の提出期限という恐怖に忙殺されて居た事を懐かしく思ったからだ。少しして、郵便物を取りに、玄関先へ出た。程無くして、扉を押し開けた。次の瞬間、「わっ!」と、驚きの声を発した。まさか、人が居るとは、思ってなかったからだ。
「モーフォッフォッ。留半樹已さん。びっくりさせて、すみませんねぇ」と、聞き覚えの有る男の声が、詫びた。
「な、何だ? 茶柱さん?」と、留半樹已は、目を白黒させながら、声を発した。そして、「な、何か、ご用ですか?」と、訝しがった。茶柱がには住所を教えていないからだ。
「モーフォッフォッ。あなたに、これを見せたいと思いましてね」と、茶柱が、勿体振った。
「見せたい物?」と、留半樹已は、眉をひそめた。そして、「押し売りでしたら、勘弁して下さいよ」と、断った。商品を見せられても、買うつもりは無いからだ。
「モーフォッフォッ。違いますよ」と、茶柱が、頭を振った。そして、「あなたの郵便受けからこれを取って来て上げたんですよ」と、両手で、紙切れを差し出した。
「勝手に、郵便受けから取らないで下さいよ!」と、留半樹已は、右手で、紙切れを奪い取った。そして、すぐさま見やった。その瞬間、「こ、これは…!」と、目を見張った。とんでもない額が、記されているからだ。
「留半樹已さん、震えが来たんじゃないのですか?」と、茶柱が、尋ねた。
留半樹已は、茶柱へ視線を戻すなり、「ああ…」と、頷いた。そして、「この額は、あのラジオが、原因なのか?」と、問うた。他に、電気料金が掛かる物は、思い当たらないからだ。
「そうです」と、茶柱が、即答した。そして、「だから、“一日一時間”だとご忠告をさせて頂いたのですよ」と、補足した。
「つまり、一ヶ月につき、一日一時間という事だったのか…」と、留半樹已は、理解した。料金票を見る限りでは、そう考えるしかないからだ。
「モーフォッフォッ。そうなりますねぇ。けれど、幸いな事に、部辺宮さんが、天へ召されたお陰で、ラジオも機能しなくなったので、通電させていないのでしょう?」と、茶柱が、質問した。
「ええ。今は、調度品になっていますよ」と、留半樹已は、回答した。ずっと、コンセントを抜いたままだからだ。
「モーフォッフォッ。もしも、差しっぱなしでしたら、こんな額では、済まなかったかも知れませんね」と、茶柱が、語った。
「た、確かに…」と、留半樹已も、表情を強張らせた。想像するだけでも、ゾッとするからだ。そして、「この程度で済んで、良かった…」と、吐露した。
「そうですねぇ。で、ラジオは、引き取りましょうか?」と、茶柱が、申し出た。
「いいえ。コンセントにさえ差さなければ、特に、どうって事も無いので、そのままにして置きますよ」と、留半樹已は、断った。色々有ったが、特に邪魔になっていないからだ。
「そうですか。留半樹已さんが、そう申されるのでしたら、私からは何も言う事は有りません」と、茶柱が、聞き入れた。そして、「では、そろそろ失礼させて頂きます。ご機嫌よう。モーフォッフォッ」と、踵を返した。
留半樹已は、料金票へ視線を戻すなり、「これだけ、電気を消費するなんて、ある意味恐怖かも知れない…」と、ぼやくのだった。