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ソーセージ

作者: 三文寝

 あ、おいしそう。


 冷蔵庫を開けて食材が無いことを確認していたとき、不意に目に入った自分の手を見てそう思った。

 なんとなくうれしくなった。自分の体にプラスの感情を持つことなんてありえないと思っていたから。

 昔から自分のことを好きになれなかったが特に手が嫌いだった。

 別に太っているわけでもないのに指は太く短く、そのくせ手のひらは異様に大きい。そのせいで余計に指が短く見える。

 あとは手汗がひどい。何かの書類に名前を書いてしまったが最後、紙もペンも台無しにしてしまう。

 あとは絶対に何も保護できない指の毛が嫌い。この毛に人を不快にする以外の効果はない。

 あとは、あとは、あとは……。


 いや違う違う。料理をするんだった。でも想像するくらいなら問題ないかな。

 そう。嫌っていた手からいい匂いがする。まるでソーセージ。

 思わず関節をひもで縛ってみる。

 か、完璧だ。噛んだらぱんぱんに詰まった肉が実にいい音を立ててくれそうだ。

 さていい加減始めようか。まずは茹でてみよう。あれ?焼くんだっけ?まあいいか。

 まずは鍋に水を張って火をかける。それから音を立てて沸騰している水にそっと投入。

 ちょっと膨らんできたので引き上げて味見。

 ……。

 まだちょっと、固い。それに若干ふやけてぐにぐにと不快な触感がする。失敗かな。

 やっぱり焼くのか。フライパンに油を敷いてから静かに置く。しばらく焼き目を入れるとだんだんといい匂いがしてきた。今回は成功してるんじゃない?

 もう焼けているみたい。あ、ちょっと焦げた。でもおいしそう。熱いうちに食べてしまおうか。


 それでは一口。

 ……やっぱり、固い。でも焦げ目が意外といける。ゴリゴリ、モグモグ。

 ご馳走様。何か飲み物あったっけ。コンビニまで行かないと無いか。しょうがない。外に出てみよう。


 あ、こんにちは。

 なんですか?今月はちゃんと家賃払いましたよ。電気は止められましたけど。

 いや、だからなんですか?

 早くコンビニ行きたいんですけど。

 ……。

 いやほんとに邪魔しないで。

 ……。

 ……。








 






 うるさい。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 あー怖かった。なんだったんだろう。けど静かになってよかった。安心したらおなかが減ってきた。

 あ、おいしそう。今度はシチューにしてみようかな。

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