必殺技
初めてのデート。
彼女は全然笑わない。
出会った頃からそうだった。
でも前は少しは笑っていたような。
遊園地という場所に不満があるのか。
それぐらいしか思い当たらない。
「遊園地、苦手だった?」
「普通」
普通が一番分からない。
本当の本当のど真ん中と思っていいのか。
コーヒーカップに乗った。
彼女のテンションは上がらなかった。
「楽しかった?」
「普通」
何をしても、どんな状況にいても、心はいつも普通なのだろう。
「お腹すかない?」
「普通」
「このジェットコースタ一少し速かったよね」
「普通」
「僕のことどう思っている?」
「普通」
なんやかんやで、時は過ぎていった。
「今日は一日どうだった?」
「普通すぎた」
すぎたは反則だ。
普通という言葉を繰り返してジワジワ痛め付けて、普通すぎるという必殺技でトドメを打たれた。
「ごめん。普通すぎるは間違いだから」
「いいよ。大丈夫だよ」
「普通すぎるじゃなくて、かなり普通すぎるだった」
その言葉に普通に、かなり心が折れすぎた。
必殺技、強っ!